なぜ鷹は「勝利の方程式」を変更した? 苦しい台所事情で工藤監督が導き出した打開策

勝利の方程式が相次いで離脱し「今はとにかく状態が悪くならないように」

 甲斐野は先頭のオコエに四球を与えたものの、後続をいずれも内野ゴロに打ち取って無失点。試合を締めくくり、2019年7月21日の楽天戦(楽天生命パーク)以来、774日ぶりのセーブをマークした。

 これまでとは違ったこの継投策の意図を、試合後、工藤公康監督はこう明かした。

「固定はしないというだけです。また明日も変わります、たぶん。あまりずっとプレッシャーがかかるということがないように、みんながいい状態で、後ろの本来の3人が戻ってきてくれれば、ここというところで使えますし、揃って作っていかないといけないところがある。そこに関しては、今はとにかく状態が悪くならないように、状態がいい選手を後ろに持っていくということをやっていきたいと思っています」

 ソフトバンクの救援陣は現状、苦しい状態にある。守護神の森唯斗、絶対的セットアッパーのモイネロはまだ離脱中。代役で抑えを務めた岩嵜も戦列を離れた。左キラーの嘉弥真も痛打されるシーンが増え、代役の代役でクローザーを任された板東も抑えに失敗。ここまで踏ん張ってきた救援陣全体に歪みができてきているのは事実だ。

 守護神の森は、早ければ、3日に行われるウエスタン・リーグの広島戦での登板を経て1軍復帰となる見込み。モイネロもブルペンでの投球を再開し、実戦復帰も近づいている。本来の“勝利の方程式”が戻ってくるまでの、もうしばらくの間、苦しいやり繰りを強いられる。その打開策として“日替わり方程式”を選択した。

 これまで緊急事態宣言下では無観客で主催試合を開催していたソフトバンクだが、この日からワクチン2回接種済みか、1週間以内の陰性証明のある人に限ってチケットを販売。1630人の観衆が久々にPayPayドームのスタンドで試合を観戦し、拍手を送った。「1600人でも、たとえ500人でも、お客さんが入ってくれるだけで全然違います。できるだけファンの皆さんには少しでも足を運んでいただきたい」と工藤監督。3日からは首位オリックスとの“勝負”の3連戦が待っている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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