甲子園沸かせた“伝説の二塁手”の現在地 元横浜主将とタッグ組み子どもたちに恩返し

野球教室では、競技の楽しさを伝えている【写真:本人提供】
野球教室では、競技の楽しさを伝えている【写真:本人提供】

現在は浜松市で放課後等デイサービスと児童発達支援の事業所を計4つ運営

 町田さんが子どもたちへ強いこだわりを持っているのは、引退後の人生にも表れている。2013年秋に社会人の名門・ヤマハでユニホームを脱ぎ、翌年秋からは、発達障害の子どもへ生活に必要な訓練をするデイサービスの会社で2年間“修業”した。福祉の道を志したきっかけは、高校2年生の時だった。選抜大会で優勝して地元に戻ると、知的障害がある少年の母親から「町田選手の姿を励みにしている」と声をかけられた。この時、障害のある子どもたちや、その保護者に「何らかの形で貢献したい」と将来像を描いた。

 2017年に会社を立ち上げた町田さんは現在、浜松市に放課後等デイサービスと児童発達支援の事業所を計4つ運営している。放課後等デイサービスでは、主に特別支援学校に通う小学校1年生から高校3年生までの子どもたちを放課後から午後6時まで預かっている。長期休みは午前9時から午後4時まで一緒に過ごす。児童発達支援では、未就学児を預かっている。

 1つの事業所では定員10人に対して、スタッフは5人ほど。定員はいっぱいだが、毎日のように利用を希望する問い合わせがあるという。「子どもたちを受け入れる場所を社会として増やしていく必要性を感じているが、事業所の新設基準を甘くしてしまうと、質の担保ができない」。町田さんはジレンマを感じながら、利用希望を断っている。

 事業所では食事のマナーや着替え、排せつなどの自立訓練をする。また、ゲームや運動を通じて集団生活を身に付けるプログラムを組んでいる。町田さんは子どもたちと柔らかいボールでキャッチボールをすることもある。目的は「1人でできることを増やす」、「自分でやりたい気持ちを育てる」ことにある。子どもたちの命や将来を預かる仕事をしている町田さん。保護者から感謝されるのは、やりがいの1つだが、子どもたちの成長を見た時が最も幸せを感じるという。目尻にしわをつくり表情を崩して、こう話す。

「子どもたちが、できなかったことができるようになった瞬間が最高ですね。毎日毎日失敗していた箸の使い方がうまくなった時。フォークなら簡単に食べられるのに、一生懸命箸で練習する。自分の名前を書けるようになった子どもが、書き取り帳を持ってきてくれる。書けたよと。幸せを感じる瞬間ですね」

 野球人生で子どもたちに力をもらった町田さんは今、恩返しの道を歩んでいる。同じ思いで活動する仲間とともに。

(間淳 / Jun Aida)

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