「真っすぐをぶち込んでいるだけ」JR東日本の150キロ左腕が“ひと冬”で進化した理由

JR東日本・山田龍聖【写真:荒川祐史】
JR東日本・山田龍聖【写真:荒川祐史】

短所の克服より、長所をもっと伸ばそうと…体の使い方を考え抜いた

 迎えた春、結果は突然出た。4月のJABA静岡大会、東海REXを相手にリリーフに立った。1球投げて、ボールが明らかに変わったのがわかった。「まだ粗削りで、本当に真っすぐをぶち込んでいるだけ。野球と言えるかもわからないんですけど、ボール自体が1個上のレベルに行けた感覚がありました」。噂はすぐに広まり、夏、秋と、スタンドにはスカウトのスピードガンが目立つようになった。「キャッチボールとか見られるの、苦手なんですよね……」と言うが、試合に入れば関係ない。剛速球で打者を抑え込んでいった。

 高岡商高3年生の時、甲子園で注目され、U-18日本代表に選ばれた。大学生との練習試合で好投し、直球で三振を奪えたのは自信になった。一方で「このまま、1個上のレベルに行けるのかなと勘違いしてしまった。安易でした」と頭をかく。ただ、もがいたことで自分の武器は直球だと再認識することができた。成長には必要な時間だったのかもしれない。

 高校時代からずっと目標にしてきたのは、DeNAの左腕・今永昇太だ。「体が上に浮いてしまいがちなので、それを直せたらと思って」両手を下に向けながら体重移動していく動きをまねてもいる。

 9月上旬の練習試合には、複数球団のスカウトが顔を揃えた。プロ野球の世界から呼ばれる日も近そうだ。ただその前に、やり残したことがある。社会人野球の頂点に立つことだ。「日本一になるために練習してきた。もっとスキルアップすることで、先のステージもあるのかなと思っています」。日本一の看板を背負って、目標の世界へ進みたい。

○山田龍聖(やまだ・りゅうせい)2000年9月7日、富山県氷見市生まれ。同市窪小4年で軟式野球を始める。西條中野球部を経て高岡商高へ。高校3年夏は甲子園で2勝し、大阪桐蔭との3回戦でも11三振を奪って注目された。進んだJR東日本では3年目になって急成長。身長182センチ、体重82キロ。左投げ左打ち。4人家族の長男。趣味は「寝ることです。それじゃいけないって分かってるんですが、休みはひたすら寝てます」

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

RECOMMEND

CATEGORY