打者はオリ首位の原動力・杉本、投手は2人の右腕が競る セイバー流で選ぶ9月のパMVP
オリ山本は4勝0敗、防御率0.90、ホークス千賀は4勝1敗、防御率1.98も…
【投手部門】
投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。
各チームのRSAA上位3人は以下の通り。
ソフトバンク 千賀滉大9.52 マルティネス3.28 松本裕樹2.00
ロッテ 佐々木朗希2.41 小島和哉2.22 益田直也1.51
西武 武隈祥太2.69 平良海馬2.27 今井達也1.07
楽天 瀧中瞭太2.36 岸孝之2.09 ブセニッツ1.91
日本ハム 伊藤大海4.68 バーヘイゲン2.43 宮西尚生3.28
オリックス 山本由伸7.35 田嶋大樹3.15 比嘉幹貴1.27
今月は山本由伸と千賀滉大が月間4勝、マルティネスと瀧中瞭太が防御率0点台となっており、公式の月間MVPの有力候補となっている。この4投手の成績を見てみると、
千賀滉大
登板5 QS5回 HQS3回 4勝1敗 防御率1.98 WHIP0.94
被OPS.478 奪三振率10.40 K/BB5.25
山本由伸
登板4 QS4回 HQS3回 4勝0敗 防御率0.90 WHIP0.90
被OPS0.445 奪三振率10.20 K/BB3.40
マルティネス
登板5 QS5回 HQS3回 2勝0敗 防御率0.55 WHIP0.97
被OPS0.456 奪三振率7.91 K/BB2.23
瀧中瞭太
登板4 QS3回 HQS1回 3勝0敗 防御率0.74 WHIP0.95
被OPS0.531 奪三振率5.92 K/BB2.67
となっている。その中で千賀のRSAAが1位となったのだが、その要因は奪三振の多さ(42はダントツ)、四死球の少なさ、ゴロ率、内野フライの多さにある。
千賀滉大 ゴロ率51.6% 内野フライ率9.9%
山本由伸 ゴロ率50.0% 内野フライ率10.0%
マルティネス ゴロ率46.5% 内野フライ率11.6%
瀧中瞭太 ゴロ率36.5% 内野フライ率12.2%
中5日登板が3回あったにもかかわらず全ての試合でQSを達成するなどチームへの多大な貢献を鑑みて、9月のセイバーメトリクスの指標による月間MVPに千賀滉大を推す。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。