「僕は身を引きます」と背番号返納を直訴 ドラフト上位候補を成長させた“気付き”
主将の一言で変化、秋には打率.591、3本塁打と打棒が開花
「俺は試合に出てなくても言わなくちゃいけないんだ。出ている吉野が自分の結果ばかり気にして全力でプレーしなくてどうするんだ」
ハッと気づいた。野球は自分だけでやるものではない。「考え方が子どもだったんです」と当時を振り返る。そこから野球に対する意識を見直した。自身は不調でも、声や練習態度でチームの士気を上げるようにした。すると、打棒が爆発。秋の県大会は打率.591、3本塁打、12打点で、昌平の初優勝に貢献した。最後の夏までに56本を積み上げ、プロから注目される選手へと成長した。
目指しているのは、楽天・浅村栄斗内野手。広角に長打が打てる技術と、打点王2回を誇る勝負強さに魅了されており「チャンスに強い打者になりたいです」。勝負強さを手に入れるために意識しているのは、考え方だ。
「元々追い込まれると余裕がなくなり、焦ってしまっていたのですが、ビハインドとかチャンスで打席に立つなら、楽しんだ方が自分にとっても得だと感じるようになりました」。象徴的なのは、3年夏の埼玉大会5回戦、1点ビハインドの9回に立った打席だ。1度、左翼への大飛球がファウルになったが、打ち直しで左翼線への二塁打。その後同点のホームを踏み、チームの逆転サヨナラにつなげた。打席を楽しむことができた結果だった。
ドラフトまで残り1週間を切った。「緊張しているんですが、自分の職業が決まるのもあるので楽しみです」と心待ちにする。昌平高での“気づき”を武器に、プロの舞台へ挑戦する。
○吉野創士(よしの・そうし)
2003年10月27日、千葉県浦安市生まれ。小学1年時に舞浜フェニックスで野球を始め、6年時にはマリーンズジュニアに選出。中学時代は硬式の東京城南ボーイズに所属した。捕手と外野を兼務してきたが、昌平高では外野に専念。主に3番を務めた。広角に長打が打てる打撃が持ち味で、高校通算56本塁打を誇る。遠投は105メートル。憧れの選手は楽天・浅村栄斗内野手。身長186センチ、体重79キロ。右投右打。