「お前をドラ1にしてやる」西日本工大・隅田を西武1位に導いた相棒の“引退撤回”

西武から1位指名を受けた西日本工大・隅田知一郎(右)と大学でコンビを組んだ山名浩伸捕手【写真:上杉あずさ】
西武から1位指名を受けた西日本工大・隅田知一郎(右)と大学でコンビを組んだ山名浩伸捕手【写真:上杉あずさ】

隅田をドラフト1位で送り出すために4年春での引退をやめた山名浩伸捕手

 今ドラフトで最多の4球団が競合し、西武が交渉権を獲得した西日本工大の隅田知一郎投手。ドラフト前から1位入札を公表していた西武が当たりクジを引くと、マスク越しに安堵の笑みを浮かべた。会見や囲み取材対応を終え、同室で見守ってきた野球部の同級生たちが駆け寄ると、そこでようやく緊張の糸が解けたように満面の笑みで喜びの声を上げた。

 指名直後の会見の中で、隅田は全国制覇を目指して戦ってきた同級生たちへ感謝の気持ちを述べていた。その中でも、隅田がことさら感謝する存在がいる。それが山名浩伸捕手(4年)。「山名がいると鬼に金棒」と隅田が厚い信頼を寄せる“相棒”だ。

 実は山名は4年春で野球部を引退する予定だった。西日本工大では部員の多くは4年春で引退し、秋までプレーを続けるのは大学後も野球を続けるごく僅かの選手だけ。実際に、隅田の同級生たちも、ほとんどが4年春の戦いを終えて引退を選んだ。山名もそうするつもりだった。

 だが、山名は隅田のために引退を撤回した。自分が引退することで、慣れない後輩の捕手と組んだ隅田が力を出しきれず、プロからの評価が下がってしまわないか……。それは本望ではなかった。隅田からも「残って欲しい」と口説かれた。気持ちは固まった「俺がお前をドラ1にしてやるわ」。冗談めかした言葉だったが、それは本心。「お前になんかされんわ」と返した隅田も、もちろん「嬉しかった」と意気に感じた。

隅田を思う山名の気持ち「知一郎のために秋まで野球を続けました」

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