なぜDeNAは宮崎敏郎に大型6年契約を提示した? 苦渋を舐めたFA戦線の過去

心を決めた最終戦セレモニー「僕たちが勝たなくてはいけない」

 ベイスターズのFAの歴史を振り返ると、これまでに10人が流出し(獲得は9人)、そのほとんどがチームの根幹を担う主力だった。1999年オフには守護神の佐々木主浩氏がMLBのマリナーズへ、2001年には正捕手だった谷繁元信氏が中日へ移籍した。そんな中で球団は2002年オフに、当時エースで1度目のFA権を取得した三浦監督と6年契約を締結したのだった。契約が切れた08年オフには「強いところを倒して優勝したい」との名ゼリフとともに残留している。

 その後も主力選手の流出は続き、2010年オフには内川聖一内野手(現ヤクルト)がソフトバンクへ、2011年には村田修一内野手(現巨人野手総合コーチ)が巨人へ移籍。主砲2人は異口同音に「優勝争いができるチームでやりたい」と語っていた。当時のベイスターズは、2002年からの10年間で最下位8度、4位1度、3位1度の“暗黒時代”だったから無理もないが、三浦監督は「僕はこのチームで優勝したくて残りましたから、悔しいですよ」と唇をかんだものだ。

 最近も2016年オフに山口俊投手が、昨年オフには梶谷隆幸外野手と井納翔一投手が巨人へ移籍した。宮崎の流出だけは是が非でも阻止しようという球団の強い思いが、契約年数にも表れたと言えそうだ。

 また、2012年からDeNAが親会社となると、積極的な企業努力で観客動員が大幅に増加。宮崎が「心が決まったのは、ホーム最終戦の試合後。セレモニーでグラウンドを1周した時、たくさんのファンの方が足を運んで下さっていて、やっぱりそこで恩返しというか、僕たちが勝たなくてはいけないと思いました」と語った通り、やり甲斐のある状況ができつつある。

 チーム自体も、2017年に3位からCSを勝ち上がり日本シリーズに進出。三浦監督就任1年目の今季は、コロナ禍で外国人選手の合流が遅れたことなどから最下位に終わったが、戦力は整いつつある。最終的に球団側へ「このチームで優勝したいです」と返答したという宮崎。長期契約初年度の来季から、チームにとって掛け替えのないピースであることを証明したいところだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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