なぜ燕・奥川恭伸はCSの大舞台で完封できたのか? 専門家が読み解く20歳の“凄み”

「完成度、制球では奥川が上回る。凄いのが佐々木朗、巧いのが奥川」

 続く代打・八百板に対しても、カウント3-2から外角いっぱいの142キロ速球で見送り三振に仕留め、ピンチを脱出して雄叫びを上げた。「ストライク、ボールのどちらとも言えるコースでした。コントロールが良いというイメージのある投手は、際どいコースに投げた時、球審に手を上げさせることができる。僕が現役時代に受けた投手の中では、日本ハムの金村暁投手(現阪神1軍投手コーチ)がそうでした。実際、奥川の制球力は現時点で球界トップクラスだと思います」と野口氏は目を細めた。

 この日の奥川のように100球未満で完封することを、「精密機械」の異名を取ったメジャーリーグの名投手にちなんで“マダックス”と呼ぶが、まさにその名にふさわしい制球力である。体力的にはまだ成長段階。レギュラーシーズンでは中9日以上のインターバルを空けて先発していた。そのペースを守るなら、CSでの出番はこれが最後になる。チームが無事に日本シリーズ進出を果たした場合、中9日で20日の第1戦に先発することになるだろうか。

「こうなると、中6日をいつ解禁するのか、非常に興味深いですね。来季開幕からなのか、球宴明けくらいまでは現在のペースを守るのか……」と野口氏。怖いのは故障だけ。今季は長いインターバルを空けたとはいえ、シーズンを通して活躍した疲労はあるはずだ。加えて、東京五輪開催に伴う中断期間を設けた影響で、例年に比べて日本シリーズ終了が約1か月遅く、その分シーズンオフが短くなる事情もある。

 パ・リーグのCSファーストステージで最速159キロを叩き出し、6回1失点の快投を演じたロッテ・佐々木朗希投手とは同世代。「完成度、制球では奥川が上回る。いわば、凄いのが佐々木朗、巧いのが奥川。タイプは違います」と野口氏は言う。今後長年にわたって球界を牽引していきそうな2人が、まばゆい輝きを放ったことは間違いない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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