日本シリーズMVPを受賞した燕・中村悠平 元コーチが感じた捕手としての成長

ヤクルト・中村悠平【写真:荒川祐史】
ヤクルト・中村悠平【写真:荒川祐史】

元ヤクルトコーチの野口寿浩氏「相手打者の裏をかくリードが冴えていました」

■ヤクルト 2ー1 オリックス(日本シリーズ・27日・ほっと神戸)

「SMBC日本シリーズ2021」は27日、ほっともっとフィールド神戸で第6戦が行われ、ヤクルトがオリックスを破って2001年以来20年ぶりの日本一に輝いた。シリーズMVPを受賞したのは中村悠平捕手。全6試合にフル出場して投手陣をリードし、打っても打率.318(22打数7安打)をマークした。

 12回裏2死一塁、守護神のマクガフが最後の打者・宗を二ゴロに仕留め、日本一が決定すると、選手会長も務める中村は人目をはばからず嗚咽を漏らした。「まさか僕が取れるとは思っていなかったですが、本当に1年間頑張ってきた成果で、最高のご褒美なのかなと思います」。MVP発表後のお立ち台では、誇らしげに笑った。

「中村のMVP受賞は妥当。中村らしい、相手打者の裏をかくリードが冴えていました。外角への変化球攻めと見せかけて、虚を突く内角ストレートで見送り三振に仕留める、そんな配球が持ち味です。成長したなぁ、と思います」。こう目を細めたのは、現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏だ。2018年にはヤクルトの1軍バッテリーコーチを務め、中村を指導した経験もある。

「中村はもともと相手の裏をかくことが好きなタイプでしたが、かつては裏をかいたつもりの球を捉えられ『あいつは何を考えているのか』と言われることもあった」と野口氏は振り返り「かつては自分主導のリードでしたが、相手打者を観察し、投手の心境にも配慮した配球に進化しました」と評した。

 オリックスの主砲でシーズン中には455打席で12球団最少の26三振(17.5打席に1個)しかしていない吉田正から28打席で6三振(約4.7打席)を奪った。打率.222(27打数6安打)に抑え込んだのも、中村の研究とリードの成果だった。昨季は相次ぐ故障でわずか29試合出場にとどまったが、今季は奮起し123試合に出場。今季チームトップで自己最高の打率.279もマークした。青木が新型コロナウイルスの濃厚接触者となって戦線離脱した3月31日から6月初旬までは、2番打者として機能する奮闘ぶりだった。

「今は本当に幸せな気持ちでいっぱいですが、われわれは去年の最下位からの出発でした。チャレンジャーとして一戦一戦頑張っていこうと思っていた。その積み重ねが最高の結果につながった」と感無量の中村。球界では、常勝チームには必ず名捕手ありといわれる。昨季までの2年連続最下位から一気に頂点を極めたヤクルトの今後は、中村にかかっていると言っても過言ではない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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