オリックス山本由伸が示した“凄み” 日本一逃すも専門家を唸らせた141球熱投

オリックス・山本由伸【写真:荒川祐史】
オリックス・山本由伸【写真:荒川祐史】

7回からスタイル一変、スライダー増やして快投

■ヤクルト 2ー1 オリックス(日本シリーズ・27日・ほっと神戸)

 日本一こそ逃したが、日本一の投手であることを証明した。オリックスの山本由伸投手は27日、ほっともっとフィールド神戸で行われたヤクルトとの「SMBC日本シリーズ2021」第6戦に先発。9回6安打11奪三振1失点に抑えた。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が、山本の凄さを解き明かした。

 中盤までは苦しい投球だった。3回から7回まで5イニング連続で先頭打者の出塁を許し、5回には塩見に先制の左前適時打を浴びた。1-1の同点で迎えた6回にはバックの連続エラーで無死一、二塁と追い込まれたが、粘った。内角いっぱいの速球でサンタナのバットをへし折り、遊ゴロ併殺。続く中村もカーブで遊ゴロに仕留め、この回を無失点で切り抜けた。

「中盤まではほとんど、ストレート、フォーク、カーブの3種類で抑え、その他にはカットボールが数球あったかどうかという程度。失点した5回ころからは、フォークがシュート回転してコントロールがつかなくなり苦労していました」と野口氏。ただ、山本が凄いのはここから。「7回からは、それまで投げていなかったスライダーを多投。これがまたキレキレなのですから恐れ入りました」。全球種が一級品で、全てを使わずに抑えることもできる。いざ絶体絶命の危機となれば、引き出しを開けて温存していた球種を取り出す。こんな芸当ができる投手には、滅多にお目にかかれるものではないと野口氏は言う。

 異例の11月下旬のナイター。気温は8度を下回り、吐く息が白い。そんな中で山本は終盤、1球1球雄叫びを上げながら腕を振った。8回にはヤクルトの誇る山田、村上、サンタナのクリーンアップを3者三振に。9回もマウンドに上がると、3人で片づけた。「スライダーを投げているうちに、調子が悪かったフォークも元に戻った。全球種が融合したのが8、9回の快投ですよ」と野口氏は説明。今季のシーズン最多を上回る、141球の熱投だった。

 レギュラーシーズンは5月28日のヤクルト戦以降、金メダル獲得の原動力となった東京五輪を挟み、無傷の15連勝で終えた。ロッテとのCSファイナルステージ第1戦は4安打完封勝利。2度の日本シリーズ登板も、打線の援護がなく勝ち星には恵まれなったが、6回1失点と9回1失点で文句のつけようがなかった。快刀乱麻の投球を続ける山本はいま、伝説の真っただ中にいるのかもしれない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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