セのベストナインに“優勝補正”はあったのか? セイバーメトリクスの指標で検証

ヤクルト・塩見泰隆(左)とDeNA・桑原将志【写真:荒川祐史】
ヤクルト・塩見泰隆(左)とDeNA・桑原将志【写真:荒川祐史】

総合的な指標「WAR」ではDeNA・桑原がヤクルト・塩見を上回る

 日本野球機構は14日、今季のセ・パ両リーグのベストナインを発表した。セ・リーグからは日本一になったヤクルトから最多の4人が選出。記者投票によって選ばれた同賞だが、データで選ぶ場合と違いは生まれたのか。検証してみたい。

 データには打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を測る指標「WAR」を用いる。セイバーメトリクスの指標などで分析を行う株式会社DELTA(https://1point02.jp/)のデータを参照した。

 セ・リーグでは中村悠平や山田哲人、村上宗隆、塩見泰隆とリーグ優勝チームから最多の4人が選ばれ、中日の柳裕也、阪神のジェフリー・マルテと近本光司、巨人の坂本勇人、広島の鈴木誠也がそれぞれ受賞。セ・リーグでは唯一、最下位のDeNAからの受賞者がなかった。

 野手の「WAR」で見ると、セ・リーグのトップは鈴木誠の「8.7」で、村上が「6.8」、山田が「6.1」で続く。4位には「5.5」で近本が入り、5位は坂本の「4.4」。ここまでの5人はベストナインに選出されており、順当と言える結果だった。

 様相が変わるのはここからだ。セ・リーグで「WAR」が6位だったのはDeNAの桑原将志で「4.3」、7位だったのはDeNAの牧秀悟でWARは同じく「4.3」。牧は同じ二塁手に山田がいたことで受賞は難しかっただろうが、桑原は受賞しても指標上はおかしくなかった。なお、桑原は投票ではチームメートの佐野恵太、オースティンに続く6位だった。

 塩見は「WAR」で言えば、リーグの野手で9位となる「3.5」だった。十分にチームに貢献しており、選出も頷けるもの。優勝したヤクルトと最下位に終わったDeNAというチーム成績の印象も投票結果に影響を与えたと考えられるが、受賞に相応しい成績だった。投手の柳はリーグトップ、捕手の中村は中日の木下拓哉の「3.4」に次ぐ「3.0」となっており、指標で見てもほぼ順当なベストナイン選出だった。

(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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