「稼ぎたくないのか、お前」 楽天一筋15年…“鉄腕”の人生を変えた星野監督の言葉

抑えに抜擢してくれた星野仙一監督に感謝「稼がせてもらいました」

 練習内容にも、ひと工夫。キャッチボールでは短い距離で20秒間に何回ボールを捕れるか競わせるなど、ゲーム性を取り入れている。単調な練習に楽しみを加え「ダラダラしないようにメリハリをつけるようにしています」と話す。

 第2の人生で指導者の道を歩み始めた青山さん。現役時代を「分岐点で色々な監督やコーチにお世話になりました」と振り返る。中でも「人生が変わった」と力を込めるのは、2011年からチームを指揮した星野仙一さんとの出会い。当時、主に先発と中継ぎをしていた青山さんは「抑えをやってみないか」と打診された。先発へのこだわりがあったため少しためらっていると、星野さんから「稼ぎたくないのか、お前」と期待を込めた一言。青山さんは「稼ぎたいです」と答え、守護神への覚悟を決めた。

 抑え投手は、たった1球の失投で、それまでの試合を壊す可能性がある。最後を任される重圧は想像以上だった。だからこそ、セーブを挙げた時の達成感も格別だった。「こんなに苦しいのかと思いましたが、試合を締めた時には先発で完投した時のような高揚感がありました」。青山さんは2012年、61試合に登板して5勝4敗22セーブ、防御率2.51と指揮官の期待に応えた。

 抑えの経験は中継ぎでも活かされ、2015年には35ホールドポイントをマーク。2018年は52試合で防御率1.85と長年に渡って安定した成績を残した。「プロ野球選手になって満足しているところがあったので、そこに刺激を与えてもらいました。抑えを経験して、こんなにも野球は大変なんだと、自分の甘さを考え直しました。不安定な投球をしている時も任せてもらえて意気に感じてマウンドに立っていました」。青山さんは星野さんに感謝し「稼がせてもらいました」と笑った。

 指導者との出会いは、時に大きな転機となる。青山さんはユニホームを脱いでから、その重みを一層強く感じている。「スクールで教えている子どもたちが甲子園に出場したり、プロになったりしたらうれしいですね。目標や夢を持っている子どもたちを応援できる存在でいることが、今の1番の目標です」。選手からアカデミーコーチへ立場が変わっても、出会いを大切にする思いは変わっていない。

(間淳 / Jun Aida)

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