「プロが惚れる美しさ」 元オリ&燕の大砲が「別格」と称した守備の名手とは?

現在はエレベーターの整備工をしている高橋智さん【写真:間淳】
現在はエレベーターの整備工をしている高橋智さん【写真:間淳】

宮本慎也氏には「監督になった姿を期待しています」

 ユニホームを脱いで20年が経っても、忘れられない記憶がある。「デカ」の愛称で親しまれ、オリックスやヤクルトでプレーした高橋智さんは、ある選手の後ろ姿が印象に残っている。「プロが惚れる美しさ」と評する名手の姿だった。

「外野手として色んな内野手の後ろ姿を見てきましたが、あんなに無駄な動きがない選手を見たことはないですね。プロが惚れる美しい守備。他の人が入れない自分だけの空間を持っているようでした」

 1984年にドラフト4位で阪急から指名された高橋さんは1998年までオリックスでプレーし、翌年にヤクルトへ移籍して3年間プレーした。身長194センチ、体重100キロの大きな体を生かして通算124本塁打。スタンドに突き刺さるような速くて低い弾道が特徴だった。

 その高橋さんが忘れられないのが、ヤクルト時代に左翼の守備から見た遊撃手・宮本慎也氏の後ろ姿だという。一歩目の動きが速く、球際にも強い。捕球は打球をつかむというより、グラブで弾くようにしていたため、動きがスムーズで滑らかだった。野球少年を沸かせる派手さはないかもしれないが、安定感は抜群だった。オリックス時代を含めて、オールスターや日米野球などでも「職人」と呼ばれる名手を数多く目にしてきたが、宮本さんの守備は「別格」だったという。高橋さんは「美しい」「きれい」と繰り返して、当時を振り返った。

「確実に捕球して送球する。単純な動きに見えますが、一連の動きに無駄がなくて美しいんです。他の選手なら打球に飛びついたり、ジャンピングスローしたりする打球に対して一歩目が速いから、シンプルな動きできれいにさばく。慎也が打球に飛び込むのをほとんど見たことがないです」

 高橋さんは、プロに「美しい」と唸らせ、守備でも魅了した宮本氏に別の役割で再びユニホームを着てほしいと願っている。「監督になったら、どんなチームをつくるのか見てみたいですね。あまりにレベルが高すぎて、プロの選手でも理解できない部分が多いのかもしれませんが、監督になった姿を期待しています」。左翼の守備から見た忘れられない後ろ姿に、高橋さんは指揮官になった宮本氏のイメージを重ね合わせている。

○高橋智(たかはし・さとし) 1967(昭和42)年1月26日、横浜市生まれ。54歳。向上高から1984年ドラフト4位で阪急に投手として入団。野手に専念した1987年に1軍デビューし、1991年に23本塁打。1992年には自己最多の29本塁打を放ってベストナインを受賞した。1999年にヤクルトへ移籍、同年に16本塁打を記録した。2001年オフに戦力外通告を受け、翌2002年に台湾プロ野球に挑戦、シーズン途中で退団、現役引退した。NPB通算945試合出場、打率.265、737安打、124本塁打、408打点。

(間淳 / Jun Aida)

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