野茂、伊良部と比べても「化け物でした」元長距離砲が忘れ得ぬ日米野球の衝撃
秋山幸二氏の気遣いに感激「オシャレすぎますよね」
もう1つ忘れられない出来事があった。計7試合開催された日米野球では、東京ドームも会場の1つだった。オリックスに所属していた高橋さんは、頻繁に宿泊するホテルが東京にはなかった。ともに日本代表だった松永浩美さんから「秋山に頼んでホテルを予約しておいてもらったから、そこでいいか」と宿泊先を確保してもらったという。秋山とは西武のスター選手だった秋山幸二氏。高橋さんがホテルの部屋に入ると、ドラマのワンシーンのような光景を目にした。
「すごい量のウェルカムフルーツが準備してあって、その横に秋山幸二と書いたカードが置いてありました。オシャレすぎますよね。面識はあったとはいえ、特別に親しいわけでもない他球団の選手に気遣いができるのは器が違うなと思いました」
翌日、高橋さんは球場で秋山氏にお礼を伝えた。「1人でフルーツ全部食べたの? と驚かれました。遊びに行くところも知らないので、部屋にこもって、おいしくいただきました」。日米野球を振り返ると、クレメンスに力で圧倒された少し苦い思い出と、秋山さんのオシャレな演出による甘い記憶がよみがえる。
〇高橋智(たかはし・さとし) 1967(昭和42)年1月26日、横浜市生まれ。54歳。向上高から1984年ドラフト4位で阪急に投手として入団。野手に専念した1987年に1軍デビューし、91年に23本塁打。92年には自己最多の29本塁打を放ってベストナインを受賞した。99年にヤクルトへ移籍、同年に16本塁打を記録した。2001年オフに戦力外通告を受け、翌02年に台湾プロ野球に挑戦し、シーズン途中で退団、現役引退した。NPB通算945試合出場、打率.265、737安打、124本塁打、408打点。
(間淳 / Jun Aida)