「プロで稼ぐ方法をわかっとらん」智弁和歌山の名将が“最後の教え子”にかける期待

広島・林晃汰【写真:荒川祐史】
広島・林晃汰【写真:荒川祐史】

電話口で叱責「そんな甘いものではない!」

 そんな不安を知る由もない林は、2021年シーズン途中は打率が.373まで上がるなど、打撃は絶好調。小さくまとまるどころか、豪快なスイングを見せ続けた。しかし、調子の良さから、常に本塁打を狙うような打撃へ変化していく様子も高嶋氏は見逃していなかった。

「怒りましたよ、電話で。巨人戦の(相手投手が)菅野(智之)のときにね。『何、引っ張ってんねん』と。(プロは)そんな甘いものじゃないと。そんな話をしました」

 2020年の4試合出場から大幅に出場機会を増やしたが、高嶋氏の目にはどのように映ったのだろうか。

「(打率が)2割9分になったら使ってくれると思うし、打率が下がらないようにしないといけないですね。例えば5打数0安打は4打数0安打に止めないと。4打数1安打だと(打率が落ちるスピードは)ゆっくりになりますよね。そういう意味で、プロで稼ぐ方法をわかっとらん」

 林の持ち味はもちろん力の打撃。打撃成績を残さなければ、なかなか使ってもらうことはできない。高校時代は通算49本塁打を放ったスラッガーだが、プロの世界で戦うには打率がものを言う。

「3割近く打たないと代打になってしまう。大事なところで1本打つ、信頼されるようにならないとね。目指すは3割です。ヒットをちゃんと打てば印象に残るんです」

 試合の後半は守備力のある選手が起用されるため、林の場合は打率を残してこそ生きる道が開ける。レギュラーを掴むかどうかの大事な一年。可愛い教え子だからこそ求めるものは大きくなる。

 林は昨年11月、高嶋氏のもとへ挨拶に訪れ活躍を誓ったという。

「少し自信がついたんでしょう。ニコニコしていましたね。やっぱりね、(会うと)怒られへんのですよ」

 約3時間に及ぶインタビューの中で、高嶋氏の表情が最も柔らかくなった瞬間だった。

(市川いずみ / Izumi Ichikawa)

市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。

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