なぜ元鷹ドラ1は豚肉を売る? わずか1年間でスコアラーを辞め、球界を離れた理由

精肉のカットや包装も行う元ソフトバンク・江川智晃さん【写真:本人提供】
精肉のカットや包装も行う元ソフトバンク・江川智晃さん【写真:本人提供】

江川氏を精肉の世界に向かわせた伯父の夢と願い

 現役の頃から「賞も取っていたし、生産には自信があった。この豚をどんどん広めていきたい。それをやってほしい」という伯父の夢と願いを聞いていた江川氏。現役時代の自身の役割を「レギュラーじゃなくて保険のような選手だった」と称するからこそ「頼られることが嬉しかったですし、やってみたいという思いがありました」。コロナ禍で、母を気遣う想いも相まって、人生の大きな決断を後押しした。

 江川氏が販売する「一志SPポーク」は、他の豚肉よりも脂身の融点が低く溶けやすい。この脂はサッパリとしていてくどくなく、赤身はコクが強いのが特徴な絶品の豚肉だ。幼少期から食べ親しんできた江川氏も「福岡はすごく食が美味しいですし、遠征先でもいろんな美味しいものを食べました。その中で、うちの豚肉ってやっぱり美味しいんだなと思いました」と改めて実感し「この豚肉を広めていきたい」という思いも芽生えた。

 当然、わずか1年でスコアラーを辞め、球団を離れることに葛藤はあった。「正直こういう辞め方をしたら、もうプロ野球界には戻れないでしょうし、福岡に戻れる機会っていうのはなかなかないなと思ったので。そこを断つのは、めちゃくちゃ勇気がいりました。スコアラーも凄く大事な仕事ですし、せっかく球団に入れてもらったので……。だけどこっちのことも気になるし……。ただ、悩んでる時間があってズルズルといくより、変わるなら早い方がいいと思いました」。2020年シーズンを最後に退団することを決め、2021年1月に故郷に戻ってきた。

 地元に戻ると、まずは、もともと小さな販売店だった「荒木田商店」をテコ入れした。「スーパーとかに行ったこともなくて、豚肉がいくらで売られているのかも知らなかった」という男が、自ら足を運んで知識を得た。肉のカットなどを自分達でできるように保健所などの許可を取り、商工会に赴いて補助金の制度がないかも調べた。加工用の機材も納入し、それと同時に豚の勉強も進めた。イチから準備を進め、半年後の6月に「まるとも荒木田商店」をオープンさせた。

「プロ野球選手全員そういう風だと思われたくない」

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY