戦力外通告の1年前に“引退決断” 元鷹ドラ1を決心させたモイネロに喫した三振

「こんなに清々しい顔してくる選手初めて」球団幹部も驚いた戦力外通告の瞬間

 球団事務所の会議室には三笠杉彦GMら編成を担うフロント陣が待っていた。来季の契約を結ばない旨を伝えられると、江川氏は即答したという。「現役はやりません」。実は他球団からのオファーはあった。ただ、1年前のこともあって現役を退く意志を固めていた。「『こんなに清々しい顔してくる選手初めて』と球団の方にも言われました」。引退試合の打診も辞退した。

 気持ちは晴れやかだった。「今だから言えますけど、もうやりたくなかったんですよ。あと1年やるのはきついなと思っていたんです」。セカンドキャリアをサポートしている球団からは、スコアラー転身のオファーを受けた。野球に携わり続けられる仕事で「ずっと福岡でお世話になりたいなと思っていた」と福岡への愛も強く、断る理由はなかった。家族とも相談した上で転身を決めた。

 これほどまでにスッキリと戦力外通告を受け入れられる選手も珍しい。江川氏も「なかなかいないですね。口では結構辞めたいとか、もう嫌だとか言ってる人もいますけど、やっぱりなかなか踏ん切りがつかない人も多いですし」と言う。そう思えたのも毎日を100%全力で過ごしてきたから。「本当にできることをやろうと思ったんで、やり残したことはないですね。あの時の自分の全力というのはそれなので、全く何のせいにもできないぐらいに自分の中でやりました」と、今、振り返っても後悔は全くない。

 この生き方はフィールドが全く違う現在も変わらない。「まるとも荒木田商店」を営む上でも「その日できることはその日のうちにやるようにしています。今まで雇われる側だった時は、暇でラッキーだと思いますけど、今はそういう暇がめちゃくちゃ怖いですよ」と柔らかな表情を浮かべる。プロ野球の世界での経験を糧に奮闘する江川氏。精肉業という新たな人生でも、日々全力投球で生き抜いている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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