プロ同期が見た“斎藤佑樹”の真実 絶やさぬ笑顔に驚き「普通は辞めたくなる」

日本ハムの球団広報を務める榎下陽大さん【写真:荒川祐史】
日本ハムの球団広報を務める榎下陽大さん【写真:荒川祐史】

120キロの直球でも…「相手を抑える方法を考え続けていた」

 斎藤さんの変化は、最初から感じていた。プロになってからキャッチボールをしてみると、高校時代に受けた感覚とは全く違った。「ボールを動かす投手になっていましたね。昔は『ピッ』て行くストレートだったのが、質が変わった印象でした。別のピッチャーになっていたと言ってもいいかもしれません」。斎藤さんはその後、肩と肘を痛めた。榎下さんがかつて衝撃を受けたボールとは、どんどん離れていった。

 榎下さんは2017年限りで現役引退。斎藤さんの現役最後の1年となった昨季は、ファーム広報としてその姿を見守った。直球は120キロ台。150キロに迫るボールを投げていた高校時代の姿とは、比べるまでもない。その中でも、打者を抑えるにはどうすればいいのかをずっと追い求めていた姿が印象深いという。

「どこに投げたら打ち取れるのか、ずっとアナリストと研究していましたね。1時間くらい話し込んでいたのを見たこともあります。登板日が決まるたびに、次に対戦するチームの打者の傾向を聞きに来ていました。今の自分の持ち球で相手を抑える方法を、最後まで考え続けていたと思うんです」

 試合を終えれば、どんな結果に終わろうと注目された。榎下さんが思い出すのは、笑顔を絶やさなかった姿だ。それは同時に、驚きでもある。

「普通は辞めたくなると思うんです。150キロを投げていたピッチャーが、120キロの真っすぐを投げているんですよ。もう投げないという選択だってできたはずです。いい時のボールは投げられないし、投げれば何かを言われる……。そんな中でどうやったらあんな笑顔でいられるのか、僕にはわかりません。強いとしか言いようがない」

「こういう呼ばれ方をするのは僕たちと『松坂世代』くらい」

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