開幕延期の危機…MLB労使交渉は何で揉めてる? 出口見えぬ“金銭闘争”の焦点

労使交渉は5度目も合意至らず、開幕延期が懸念されている【写真:Getty Images】
労使交渉は5度目も合意至らず、開幕延期が懸念されている【写真:Getty Images】

3月1日までに合意しなければ「開幕日は延期される」との見方も

 混迷が続くメジャーリーグで、開幕延期を懸念する声が高まっている。MLB機構と選手会は5度目の労使交渉に臨むも、合意に至らず。米全国紙「USAトゥデイ」のボブ・ナイチンゲール記者は「スプリングトレーニングは確実に遅れる。2月28日(日本時間3月1日)までに合意に至らなければ、開幕日は延期される」との見方を示した。ロックアウトから2か月余り経っても、見えない出口。そもそも何に揉めているのか。

 スプリングトレーニングはおろか、3月31日(同4月1日)の開幕ですら、危ぶまれる事態になってきた。米メディアは、双方の泥仕合をこぞって報道。米スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者が「予定通り開幕すると信じる理由が、ひとつもない」とツイートすれば、「MLBネットワーク」のジョン・ヘイマン記者も「MLBは今回の選手会の提案で、数日のうちに協定妥結に持ち込めるはずがないことは分かっていた」と、先が長いことを強調した。

 今後5年間の“約束事”を決める労使交渉の争点は、多岐に渡る。米メディア「CBSスポーツ」によると、「最優先課題は、選手側の取り分を増やすこと」。双方の隔たりの根底には“富の分配”への不満がある。そのため、最低年俸の引き上げや年俸調停権、FA権取得期間の短縮などを求めてきた。

 さらに、年俸額が大きく関わるもう一つの争点が「ぜいたく税」。設定されている年俸総額を超過した球団に課せられる制度だ。年俸高騰に歯止めをかけ、健全な球団経営を促す役目を持つ反面、選手側にとっては低年棒を正当化する大義名分にも映る。

 今回の交渉でMLB側は、ぜいたく税を課す設定額の段階的な引き上げを提案。2022年からの2年間は2億1400万ドル(約248億円)で、労使協定の更新を迎える2026年には2億2200万ドル(約257億円)まで上げていくプランを示したが、そもそも選手会が提案していたのは2億4500万ドル(約284億円)で、隔たりは大きい。

 これまでの交渉を巡っては、1月に選手会側がFA取得年数や球団間の収益分配について譲歩の姿勢を見せ、新労使協定の妥結に向けて楽観的な空気も漂った。しかし、懸案の最低年俸やぜいたく税の議論が前進せず、MLB側は米連邦政府に仲裁を求める事態にまで発展。ロブ・マンフレッドコミッショナーは10日(同11日)に「(開幕に)間に合うように合意できると信じている」と強調したが、刻一刻と開幕日は迫ってくる。泥沼化した“金銭闘争”に終止符を打つには、双方の歩み寄りしかない。

(Full-Count編集部)

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