自分だけ1軍に呼ばれず…覚醒間近の大砲・ロッテ山口航輝を変えた“悔しさの記憶”

ロッテ・山口航輝【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】
ロッテ・山口航輝【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

「あかんこと考えていた」昨季中盤にはファームでもがく

 4月に4本塁打を記録したが、5月は15打数2安打と状態は下降線を描き、5月31日には出場選手登録を抹消された。そのまま、後半戦が始まるまで2軍暮らし。開幕時の思い切りのいいスイングは影を潜めていた。

「三振したくない、ゲッツーになりたくない、メンタル面で弱気になっていた部分がありました。打席の中であかんことを考えていたというか、そういう打席が多くなってきて、そこから調子が落ちたかなと思います」

 鳥越裕介2軍監督からは「そうやって考えすぎるからダメなんだ」と声を掛けられ、思考をシンプルにするよう心がけた。「結果を考えずに、自分のスイングをしよう」。福浦和也2軍ヘッドコーチとは下半身主導のバッティングに取り組み、自分の間合いを徐々に取り戻した。東京五輪による中断期間中のエキシビションマッチでは2本塁打と結果を残し、後半戦初戦にはスタメンに返り咲いた。

 後半戦はレオネス・マーティン外野手の怪我もあり、出場機会が増えて5本塁打を放った。楽天とのクライマックスシリーズ第1戦では右翼ポール直撃の本塁打を放つなど勝負強さも見せた。それでも「まだもうちょっとできたんじゃないかなという部分もあります。三振数だったり、調子の波が激しかったり、そういうところは今思えば修正できたかなと思います」というのが正直な感想だ。

 今季は1年間、主軸としてチームを引っ張るつもりでいる。「1軍の試合にも出て、一昨年の悔しさはしっかりと晴らせたとは思います。今年は20本、30本と、高い目標を持ってやっていきたいなと思います。打率は.250くらい……(笑)。30本打っていればそれくらいの数字にはなっていると思うので」。秋季練習でも徹底的にバットを振り込んだ。昨年もがいた経験は、きっとシーズンで生きてくる。ロッテの若き大砲は真の覚醒まで、もう少しだ。

○山口航輝(やまぐち・こうき)2000年8月18日、大阪府箕面市出身。21歳。小1から野球を始め、高校は秋田県の明桜(現・ノースアジア大明桜)に進学。高校では投手も務め、2年夏には県大会決勝で、金足農の吉田輝星(日本ハム)に投げ勝ったことも。ただ牽制帰塁の際に右肩を亜脱臼し、甲子園では登板なしに終わった。3年夏も秋田大会決勝で金足農と対戦するも敗退。2018年のドラフトで4位指名を受け入団。183センチ、97キロ。右投げ右打ち。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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