大谷翔平「来た球を打つ」 菊池雄星から豪快弾、18文字のHR談話に隠れた“知の準備” 【マイ・メジャー・ノート】第2回

マリナーズ・菊池雄星から16号ソロを放ったエンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】
マリナーズ・菊池雄星から16号ソロを放ったエンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

菊池との2年ぶり対決で16号、短い談話を出した「来た球を打つ、それだけを考えていました」

 大谷翔平の短いコメントに立ち入ってみた。

 菊池雄星から放った「初球本塁打」についてである。昨年6月5日(日本時間6日)、両者2年ぶりの対決となったアナハイムでの第1打席、中堅左越えに16号ソロを叩き込んだ。捉えたのは内角から甘く入る初球のカットボール。試合後、大谷は球団を通じてコメントを出した。

「来た球を打つ、それだけを考えていました」

 これを「シンプルに、初球からいこうと思っていた」と解釈しても問題はないだろう。でも、直観的に腑に落ちそうにない。飲み込まれている“文脈”がある気がする。本人の肉声といえども、それを錦の御旗にするのもどうかと思えてくるのだ。

 実を言うと、この割り切れなさを担保してくれるのが、イチロー氏と高校球児たちの触れ合いだった――。

 一昨年から、オフに全国の高校を指導行脚するイチロー氏は、今回、女子高校野球選抜チームとも交流の輪を広げ話題を呼んだが、一連の活動を伝える報道で強く感じたのは、球児たちが欲しているのは、情緒的な叱咤激励よりも「野球の研究者でいたい」と宣言するイチロー氏が引き出す、乾いた研究書からのアドバイスだということ。その一端は、昨年12月に高松商業野球部を指導した際のやりとりからうかがい知ることができる。

「狙い球」について問われたイチロー氏は「高校時代はコースでプロでは球種」と返し、豊富な持ち球を操る投手が増えた現状を見据え「絞るとしたら球種なのでは」と助言。また、追い込まれた際の「ボールの待ち方」には「基本は、真っすぐ待ちの変化球打ち」と説き、自身がプロで練り上げた逆パターンの“遅い球待ちの速球対応”には「基本がないまま、終わってしまう。それは気を付けて」と注意点を添えている。

 切れば血の出るような実践的な言葉は貴重である。

 2001年のイチロー以来、日本人選手として20年ぶりのMVPに輝いた大谷翔平を研究対象にする球児たちが急増していると聞く。もっとも、学生野球資格回復者のイチロー氏とは違い、大谷が球児たちに指導することはできない。であれば、件のコメントの考察を実践知への練習問題とすれば微力になれると考えた。

若き球児たちの後ろから大谷の声に耳を澄ませば…

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