鷹が負傷者続出でも首位の秘密　元同僚コーチ断言、藤本監督は「全て知っている」

藤本監督は「聞き上手ですし、全然怖くない」

　就任1年目の藤本博史監督率いるソフトバンクは、栗原陵矢外野手が左膝靱帯を断裂するなど負傷者が相次ぎながら、パ・リーグ首位を守っている。元ヤクルト外野手で、現役引退後にソフトバンクのコーチとして藤本監督とタッグを組んだ経験のある野球評論家・飯田哲也氏が、知られざる新指揮官の素顔と強さの秘密を解き明かす。

　藤本監督は現役時代のほとんどを南海・ソフトバンクで過ごし、引退後も2011年から昨年までの11年間でソフトバンクの2軍打撃コーチ、1軍打撃コーチ、3軍監督、2軍監督を歴任した。飯田氏は「チームの全てを知っている人です。選手の特徴、性格、精神的に強いかどうか、叱った方がいいのか、褒めて伸びるタイプなのかまで熟知していますよ」と評する。

　3月31日のロッテ戦では、育成出身の大関友久投手がプロ初先発初勝利。開幕ローテ候補だった田中正義、松本裕樹両投手が故障などで離脱した穴を埋めた。4月5日のオリックス戦でも、先発の石川柊太投手が右足首の違和感で降板したが、2番手で育成出身の尾形崇斗投手が好投しプロ初勝利。元広島で四国アイランドリーグplusを経て、育成から開幕直前に支配下登録された藤井皓哉投手もリリーフで2勝を挙げている。“代役”が活躍するのも、藤本采配ならではだ。

　飯田氏は藤本監督が3軍監督を務めていた2019年、3軍外野守備走塁コーチとして支えた。その際、「凄いな」と感心させられた出来事があったという。「3軍の選手にも1軍の試合を見せるべきだと球団に掛け合って、PayPayドーム（当時の名称はヤフオクドーム）のスタンドに連れて行き観戦させたのです。試合後にはレポートも提出させました」と振り返る。「3軍の選手が1軍の雰囲気、レベルを実感する機会はなかなかありませんから。レポートを見ると、みんな『やっぱりここでプレーしたい』と思いを新たにしていましたよ」と効果のほどを説明する。

　戦術はセオリーに忠実。「ファームの頃から、1点ずつ取りにいく野球を徹底していました」と飯田氏が話す通り、11日現在、ソフトバンクの16犠打はリーグ最多。バント、エンドラン、進塁打など小技を絡める。開幕8連勝は全て3点以内の接戦を制したものだった。「ソフトバンクには打つ人がたくさんいましたが、ある程度年齢も上がってきて、ここ数年は怪我人も毎年出ている。戦術を転換するにはちょうどいい時期だったのではないでしょうか」と飯田氏は見る。

　トレードマークの口髭を蓄え、おまけに体重100キロの巨漢。風貌は迫力満点の藤本監督だが、飯田氏は「聞き上手ですし、全然怖くないですよ」と証言する。それでも他球団にとっては、実に手ごわい指揮官だ。

（Full-Count編集部）