オリックスの瓜野純嗣ブルペン捕手は今年で12年目のシーズン
地道な作業の積み重ねがオリックスの投手陣を支えている。これまで何十万球のボールを受け続け、時にはアドバイスを送り、今やチームに欠かせない存在となっているのが瓜野純嗣ブルペン捕手。NPB経験こそないが、紆余曲折を経て2010年に入団し、今年で12年目のシーズンを迎えている。
「プロ野球選手にはなれなかったけど、オリックスに入れたことは奇跡だと思います。やっぱり野球が好きなんだなといつも実感しますね」
瓜野さんは高校時代は福岡・沖学園高で主将を務め、強肩強打の捕手として活躍。プロ入りを目指し2003年に福岡経済大に進学したが、故障もあり、1年もたたず中退すると、自動車整備会社に就職した。これまで野球一筋だった20歳の青年は自暴自棄になり、一度は“遊びの世界”に進むこともあったという。
「仕事をしながら1年ぐらいフラフラしていました。草野球で野球をやることはあったのですが、たまたま友達に独立リーグのトライアウトに誘われて。そこで人生が変わりました」
独立リーグのトライアウトで元プロから「お前のキャッチングなんかどうでもいい」と批判
2007年12月に規模を拡大した「四国・九州アイランドリーグ」が選手を集めるためにトライアウトを開催。約4年ぶりに硬式球を手にした瓜野さんは選手選考を兼ねた紅白戦に捕手として出場。だが、この試合に参加していた元プロ野球選手から「お前のキャッチングなんかどうでもいい。テンポ悪すぎるよ」と、面と向かって批判された。
結果的に福岡レッドワーブラーズへの入団が決まったが、この一言が野球への情熱を取り戻すきっかけになった。「絶対に見返してやると。そこから、誰からも認められる捕手、信頼されるキャッチングを追い求めるようになった」。2008、09年と福岡で2年間プレーすると正確なキャッチングが評価され、オリックスから声がかかり、ブルペン捕手としてNPB入りすることが決まった。
オリックスに入った当初は2軍を担当していたが、春季キャンプなどではエースの金子千尋(現日本ハム)ら1軍の一線級がこぞってブルペン捕手役に瓜野さんを指名。私生活でも面倒を見てもらうなど、歴代のエースたちから可愛がられた。
次なる目標は日本代表のブルペン捕手「声がかかるだけの実力を付けたい」
そして、現在は1軍のブルペン捕手として山本由伸、山岡泰輔、宮城大弥らから全幅の信頼を得る存在だ。球団SNSなどでもキャッチング技術の動画が取り上げられるまでになったが「もっと、もっと上手くなりたい。どうすれば気持ちよくマウンドに送り届けることができるか。少しでも力になれる方法を考えています」と、探求心が衰えることはない。
人生が変わった独立リーグのトライアウトから15年。これまでオールスターなどで他球団の選手とは交流してきたが、次なる目標はJAPANのユニホームを着ることだ。もちろん、選手ではなくブルペン捕手として。
「去年のオリンピックもいい刺激になりました。日本を代表する選手たちのボールを受けて、力になりたい。可能性があるのはWBCかな。選考基準は分からないですが声がかかるだけの実力を付けたい」
試合で打つこと、投げることでチームに貢献はできない。だが、“最強の裏方”として勝利に欠かせない存在になることはできる。日本一のブルペン捕手を目指し、瓜野さんは今日も投手陣の球を受け続ける。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)