かつては先発に“嫉妬”したことも… 日本ハム宮西「目立たないリリーフ」の美学

今季は苦戦も「やっと光りが見えたというか…」

 以来、リリーフとしてのプライドを持って仕事に徹している。その美学は「一番すごいのは目立たないリリーフ」。マウンドに上がれば、目の前の打者をサッと片付けて、静かに戻ってくる。1年通してメンタルを安定させるため、常に平常心を心掛け、一喜一憂はしない。

 そんな宮西が、今季は思うような結果を残せず、夜も眠れないほど苦しんでいた。「こんな感じやないのに、何があかんねんと。どこを目指してやればいいのか分からない状況だったので、やっと光が見えたというか、最悪なところは脱出したかなというところ。ここからですよ」。9回を3者凡退で締めたこの日、フォーム修正の手応えを口にした。

「グラウンドで目立ってはいけないけれど、記録の時は目立っていい」というのも宮西が語るリリーフの流儀の一つ。それは球界におけるリリーフの評価を高め、若いリリーバーの道標になるという強い使命感の表れでもある。

 ヒーローインタビューで観客の視線を一身に集める宮西の言葉に耳を傾けていたら、ハッとした。「こういう記録をもう簡単にとれる年でもないので、今日の景色をしっかり眺めたいです」。冗談混じりの口調だったが、もうすぐ37歳になる男の本音も垣間見えた。球史に名を残す鉄腕のヒーローインタビューをあと何度見られるだろうか。目前に迫る記録は、あと23ホールドで到達する400ホールド。前人未到の偉業もまた本拠地の勝ち試合で達成して、お立ち台に上がってほしい。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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