エンゼルス大型連敗も「ミーティングやらない」 知将マドンが選手を叱咤しないワケ
選手に贈るメッセージの数々「生きていく上で示唆に富む言葉だと思う」
米メディアからメジャー最弱球団の評を下されたレイズがワールドシリーズにまで駒を進めたその年、本拠地のトロピカーナ・フィールドのクラブハウスの柱には、「不条理の哲学」で名高いフランス人のノーベル文学賞受賞者カミュや米連邦準備制度理事会(FRB)議長として知られる経済学者グリーンスパンらの名言が書かれた紙が貼られていた。控えめな文字でプリントされた言葉を選んだのがジョー・マドンであった。
その理由を尋ねると、相好を崩したマドン監督はこう返している。
「なにも選手全員に見てもらおうということで貼ったわけじゃないんだ。生きていく上で示唆に富む言葉だと思うんだ。それから何かを感じてもらえるだけで僕はいいと思っている。ただそれだけのことさ」
クラブハウスの入り口にあるホワイトボードには先発メンバー表と試合開始までの準備を記した時間割表が並ぶが、その上部には小さな文字の引用句が日替わりで載せられている。今季の開幕戦から日々更新される言葉を選んでいるのがマドン監督の代弁者、レイ・モンゴメリーベンチコーチだ。この日、同コーチが選んだのは、10連敗を阻止できなかったエンゼルスの選手たちには染み透るものになった。
NEVER CEASE TRYING TO BE THE BEST YOU CAN BE!
(最善を尽くそうとすることをやめてはいけない)
戦略と戦術は練り上げても、勝負に対する態度は監督が導くものではない――。マイナーの選手時代とエンゼルスの下部組織でのコーチ業を合わせ30年もの下積みを経験した“知将”、ジョー・マドンは誰よりもそれを知っている。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)