大谷翔平が身につけた“審判心理”も読むしたたかさ 雄叫びの裏にある冷静な視線

打者1人に対して何球を費やせるのか…常にある“逆算”の道筋

 ただ一人、2安打を許した「4番・DH」のスアレスに対しては、打たれた“結果球”から次の打席の“入り球”に根拠のある一投を選択している。

 初回、内角の直球でスアレスのバットをへし折ったが、中前に運ばれると、次打席の初球はスライダーで入った。この打席でも直球を安打されたが、3打席目はスプリットで入りスライダーで外野フライに打ち取った。この日、最も警戒すべき打者にも「裏=確率の高い」配球で一球一球打ち取るための作業を、時に大胆にかつ繊細に遂行していった。

 そして、判定を下す審判の存在も俯瞰してマウンドに立った――。

 四球と安打、そして暴投で走者を二、三塁に置いた初回、大谷はこの試合最も多い23球を費やし無失点で終えると、アリエタ主審に歩み寄り内外角と高低のストライクゾーンをあえて確認している。これは本来、捕手がもつべき心得の一つだが、マウンドに立つ大谷が直接動くことで審判の心理も違ってくる。打者心理、投手心理があれば審判心理というものもある。大谷は、この3つ目を読むしたたかさを身につけた。

 今季3度目の7回には到達できなかったが、「7球から15球少なかったら全然いけるんじゃないかなと思います」と大谷。長い回を投げるためには、打者1人に対して何球を費やせるのか、“逆算”の道筋が常に頭に描かれている証左の言葉だ。

 大谷翔平はかくして今季5つ目の白星を手にした。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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