元楽天・鉄平さんが振り返る現役生活 9割5分が“苦しみ”も何にも代え難かった喜び

楽天での主力時代はプレッシャーで「苦しさばかり」

 レギュラーを奪うための練習は大変です。ただ、本当にきついのは、試合に出続ける立場になってからです。一番しんどかったのは、間違いなく楽天で主力として試合に出ていた時です。ヒットを打つ、試合に勝つ喜びがある分、駄目だったときの反動は大きくなります。結果を求められるプレッシャーと、そのための努力は苦しさばかりです。結果を出さないといけないわけですが、基本的に結果は出ません。打率3割で成功と言われる世界なので、失敗の方が圧倒的に多いわけです。

 ヒットを打った時、盗塁に成功した時、ある程度活躍して試合に勝った時、ホッとする瞬間はあっても、すぐに次の打席や試合がやってきます。試合に出続ける大変さ、目の前の試合に勝つ難しさ、もう2度とヒットが出ないのではないかという不安。暗闇の中で前に一歩踏み出して、そこに地面があったと安心するような心境の繰り返しです。プロ野球生活は、おそらくどの選手も9割5分は苦しさやつらさが占めていると思います。

 それでも、0割5分しか味わえないやりがいや喜びが特別だからこそ、努力できます。何万人もの人から注目されて、大歓声の中でプレーできる高揚感は何にも代えがたいものがあります。楽しいと思ったことはありませんが、やりがいは感じていました。子どもの頃から、おぼろげながら思い描いていた夢が叶ったわけですからプロ野球選手になれてよかったと引退してからは思いました。

 身をもってプロ野球選手の大変さを知っている私ですが、自分の息子やアカデミーの子どもたちに「プロ野球選手になりたい」と言われたら、明るく満面の笑みで「頑張れよ」と伝えたいと思います。プロになるのはマニュアルがあるわけでも、テストのように合格点があるわけでもありません。方法が明確にはないからこそ、絶対にプロになると重く捉えないでほしいんです。本気でプロを目指す年齢に達する頃になれば、それなりの厳しさ、難しさは絶対に出てきます。放っておいても、頑張らないといけない時期が来ます。それまでは、特に小学生、中学生くらいの子には明るく頑張れよと言いたいです。そして、「プロになりたいなら練習。たまたまなれる仕事ではないよ」と明るく付け加えます。

トップレベルにいる人の共通点は「負けず嫌い」

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