12試合連続無失点の阪神ケラー “新球種”武器に覚醒…藤川、ジョンソンを超える指標

阪神のカイル・ケラー【写真:中戸川知世】
阪神のカイル・ケラー【写真:中戸川知世】

開幕戦では悪夢のセーブ失敗も…復帰後は好投を続けるケラー

 前半戦最終戦で最大16あった借金を完済し、4カード連続勝ち越しと波に乗ってきた阪神。チーム状態とともに、自身の成績を上げてきたのが、今季から加入したカイル・ケラー投手だ。昨季まで守護神だったロベルト・スアレス投手(現パドレス)が抜けた穴を埋めてほしいと期待され、3月25日の開幕戦は9回のマウンドに上がったが、3失点して負け投手に。29日にも2失点で負け投手となり2軍調整を余儀なくされたが、6月9日に1軍復帰すると、14試合に登板しわずか1失点と好投を続けている。

 右腕に、どんな変化があったのか。新型コロナウイルスの影響もあり、来日したのは3月6日。同10日に入団会見を行って、2週間後の25日には公式戦のマウンドへ上がった。日本での調整期間が短かったこともあってか、当初は直球の球速にばらつきもあった。セイバーメトリクスの指標を用いて分析などを行う株式会社DELTA(https://1point02.jp/)のデータによると、炎上した3月25日の直球の平均球速は148.7キロ。同29日は146.1キロだった。しかし復帰後は157キロを計測するなど、14試合中13試合で平均球速150キロ超え。メジャーに比べて“掘れる”とされる日本のマウンドでも、腕を振れるようになってきた。

 変化球も当初はカーブとスライダーの2種類だったが、復帰後はスプリットを投じるようになった。復帰後初登板となった6月9日のソフトバンク戦(PayPayドーム)では“新球”を交えて3三振を奪う。そして6月10日のオリックス戦で1失点して以降、1軍戦では被安打0。12試合連続無失点を継続している。

 まだ投球回は15イニングと少ないが、奪った三振は27個。公式戦では毎度のように三振を奪い、登板して三振を奪わなかったのは1試合だけだ。対戦打者に占める奪三振の割合である「K%」は驚異の45%。10イニング以上登板した投手の中では両リーグトップで、これは2011年の藤川球児(41.5%)、2019年に阪神に在籍したピアース・ジョンソン(40.5%=現パドレス)らを上回る数字だ。開幕はつまづいた阪神だが、チーム防御率はセ・リーグ唯一の2点台。日本のマウンドに慣れ、実力を発揮しつつある新助っ人が、チームに更なる飛躍をもたらすか。

(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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