「足を引っ張って、迷惑かけて…」384打席目で今季1号 鷹・甲斐拓也の忸怩たる思い

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】

王会長からは直々にメッセージも「1人の野球選手として幸せ」

■ソフトバンク 10ー0 ロッテ(25日・PayPayドーム)

 ソフトバンクは25日、本拠地PayPayドームで行われたロッテ戦に10-0で大勝し、優勝へのマジックを「5」に減らした。2点をリードした4回、勝利を大きく手繰り寄せる一発を放ったのは甲斐拓也捕手。384打席目で飛び出した今季初本塁打となる3ランで、相棒である千賀滉大投手を強烈に援護した。

 2点をリードして迎えた4回の攻撃だった。先頭の中村晃外野手が三塁への内野安打で出塁。2死二塁で周東佑京内野手が四球を選ぶと、甲斐に打席が巡ってきた。ここまで打率.182。今季打撃不振に苦しみ続けてきた甲斐は1ボールからの2球目、小島の投じた143キロのシュートを弾き返した。

 打球は低い弾道のまま、左翼フェンスを越え、ホームランテラス席へと飛び込んだ。リードを広げる3ラン。今季初めて、様々な思いを抱えながら、ゆっくりとダイヤモンドを一周した。「やっぱりいいものだな」。ベンチで笑顔で迎えるチームメートの姿が目に入ると、思わず表情が緩んだ。

 今季は打力向上を掲げながらも、なかなか結果も出ずに不振が続いた。甲斐自身、当然ながら責任を痛感していた。「今年は足を引っ張って、迷惑をかけていたところがたくさんあった。自分の中でも悔しさとか、もどかしさというのはありました」。試行錯誤を繰り返しても、なかなかうまくいかない。「自分の中でもモヤモヤしているところがずっとあった」。周囲を飛び交う批判に傷つくこともあった。

 苦しい日々も励ましが支えになった。王貞治球団会長は直々に助言のメッセージを何度も送ってくれた。「気持ちの面でもですし、バッティングについても気づいたことがあれば、1つずつ丁寧にメールで教えてくれたり……。本当にこんな嬉しいことというかは、1人の野球選手として幸せだな、と思いながらやっています」。王会長たちの期待に応えたい、という思いも甲斐の気持ちを奮い立たせている。

 残り6試合で優勝へのマジックは「5」になった。正捕手には途方もないプレッシャーがかかる。「勝たないといけないんで、もう本当そこが全て。残り試合が少なくなってきて、何とかバッテリーで守り勝つことができるようにというふうに思ってやっています」。ここまで来れば、勝利こそ全て。歓喜の瞬間を迎えるまで、甲斐は必死に戦い続ける。

【実際の映像】様々な思いを噛み締めた表情でダイヤモンドを一周する甲斐

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