「改めて阿波野秀幸という男はすごい」 与田剛氏が語る大学時代から続く信頼
任期中に投手陣の成績が上がるも「たまたま」
監督とコーチとして一緒にチーム運営に携わってみると、「先輩ですが、改めて阿波野秀幸という男はすごいなと思いました」と話す。与田氏にそう思わせた理由とは……。
「あんなにしっかり“報・連・相”ができる人はいませんよ。本当にしっかり報告してくれる、連絡してくれる、どんなことでも相談してくれる。また、何でも伝えるわけではなく、自分で解決できるものは解決して、与田に伝えるべき・相談するべきと判断したら必ずしてくれる。また、その選別が非常にうまい。
野手のコーチを含め、僕は自分に足りないものを持っている人をコーチとして招きました。だから、その部分に関してはコーチに任せ、好きにやってもらいました。もちろん、コーチに任せているから監督の責任ではないということではない。そういう話をとても理解していただきました」
コーチがそれぞれ好き勝手に指導するのではなく、まずは「コーチ同士でも“俺の基本”はみんな違うので、選手が迷わないように、野手コーチの基本、投手コーチの基本をすり合わせてもらいました」という。そこで決まった基本は1軍、2軍を通じた共通認識として定め、その上で各コーチが持つ強みを発揮してもらった。
3年間の任期中は、通常1チーム4人の投手コーチを5人と増員して注力したこともあり、投手陣の成績は大きく向上した。中でも大野雄大の安定感は飛躍的にアップし、2020年には最優秀防御率、最多奪三振を記録し、沢村賞に輝いた。だが、これは「たまたま」だと話す。
「結果として、与田が監督で阿波野投手コーチだった時に成績を残した。ただそれは、僕の前任者の森(繁和)さん、谷繁(元信)、高木(守道)さん、落合(博満)さんと、これまで雄大に携わった人たちの流れで、たまたま僕の時に花開いただけ。成績が出なかった時も含め、そこまでの過程が大事だったと思うんです。だからこそ、引き継ぎ、ですよね」
もし、またどこかで監督を務めることになったら、阿波野氏にコーチ就任を依頼するのだろうか。「結構怒らせたから、もう断られるかも(笑)」と冗談めかしながらも、言葉に力を込めて言った。
「最大限に助けてくださった方。僕にとって必要な人ですから、その想いは揺るがないですよ」
あと数年で40年を迎えようという信頼関係は、ちょっとやそっとでは変わらないほど固い。
(佐藤直子 / Naoko Sato)