「プロ人生で一番つらい登板だった」 現役引退…西武・十亀が振り返る意外な試合

引退会見で豊田清コーチから花束を渡される西武・十亀剣【写真:宮脇広久】
引退会見で豊田清コーチから花束を渡される西武・十亀剣【写真:宮脇広久】

昨年10月19日、松坂大輔氏の最終登板で後を受けてマウンドへ上がった

 西武の十亀剣投手が30日、今季限りでの現役引退を表明した。西武一筋プロ11年。チーム事情に応じて先発とリリーフの両方をこなし、通算258試合、53勝50敗3セーブ21ホールドをマークしているが、本人にとって最も印象に残る登板は意外な試合だった。

「プロ野球人生で一番つらい登板でした」。十亀が苦笑まじりにそう語ったのは、昨年10月19日に本拠地メットライフドーム(現ベルーナドーム)で行われた日本ハム戦。昨季限りで引退した松坂大輔氏の最終登板だった。先発した松坂氏は初回先頭の近藤に四球を与え、予定通り打者1人(5球)で降板。2番手で後を受けたのが十亀で、後続を無難に3人で片付けた。

「(ブルペンでは)松坂さんの集中の邪魔をしないように、松坂さんの投球がミットを叩く音を聞いてから投げたり、気を遣っていました」と振り返り、「しかも四球で走者が出たので、僕がこの走者を還してしまったら、松坂さんの最後の年の防御率が大変なことになってしまう。それだけはなんとか回避せねばと、その思いだけで必死に、多分(現役生活で)一番丁寧に投げました。結果的に0点に抑えてベンチに戻った時、松坂さんが笑っていらっしゃったので、良かったなと思いました」と表情を綻ばせた。

 他人への思いやりが深い、人のよさがにじむエピソードだが、本人は「第2の人生でも、あれ以上のプレッシャーはなかなかないと思う。何が起こっても、あれを思えばなんてことはないと考えてやっていきたい」とも。気さくな人柄で、かつては同い年の野上亮磨氏(現巨人スコアラー)とともにチームの“宴会部長”と呼ばれた。

 十亀のプロ入り当時に監督を務めていた渡辺久信GMも感慨深げだ。渡辺監督最終年の2013年、2年目の十亀は28試合8勝8敗、防御率3.45をマークした。渡辺GMは「あの年はチームで十亀だけが1度も離脱せず、先発ローテを守り抜いてくれた。1年間戦う上ではそういう投手が必要。勝敗は五分だったが、イニングを稼ぎ、他の投手に負担をかけなかったのだから、胸を張っていいと話しました」とうなずいた。

 今季最終戦となる10月2日の日本ハム戦(ベルーナドーム)で、現役最終登板に向けてベンチ入りする予定。チームは29日に3位が確定し、3年ぶりのクライマックスシリーズ(CS)進出を決めたばかりだ。渡辺GMは「(チームの順位が決まらなければ)1軍で投げられない場合もあるという話をしていたし、本人も理解していた」と明かし、「一区切りついて投げられそうな感じになったので、本人も準備するんじゃないかな」とホッと胸をなでおろした。チームのために粉骨砕身尽くしてきた十亀へ、野球の神様が贈ったご褒美だろう。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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