ヤクルト坂口智隆が唯一、弱音を吐いた夜 7年前に溢した不安「野球できるんかな…」

ヤクルト・坂口智隆【写真:荒川祐史】
ヤクルト・坂口智隆【写真:荒川祐史】

「引退してからも野球には関わっていくんじゃないかな。野球が好きやから」

 引退試合も坂口らしさ溢れる一戦だった。通算1526本目の安打は、巧みなバットコントロールで左前に運ぶ“安打製造機”そのものだった。まだ、やれると思わせる打撃内容にファンからは惜しみない拍手が送られた。

 この日は、同じく今季限りで引退する内川のタイムリーにもらい泣きする姿もあった。自身のことだけでなく、先輩、後輩の活躍を心から喜ぶ姿は昔から変わらない。見た目は強面だが、ファンや選手から“グッチ”の愛称で親しまれ、誰からも愛される心優しい男だ。

「引退してからも野球には関わっていくんじゃないかな。野球が好きやから」

 兵庫・神戸国際大付からプロ入りし、20年間、駆け抜けたプロ野球生活。試合が終われば真っ先に行うのは体のメンテナンスだった。もう、連日、痛み止めを服用することも必要ない。ボロボロの体を休める日が、ようやく訪れた。ファンを魅了し続けた全力プレーはもう見ることができないが、違った形で野球界に戻ってくることを誰もが待っている。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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