阪神は「本当の抑えを確立すべき」 専門家が提言、CSを勝ち抜き来季につなげる処方箋

阪神・矢野燿大監督【写真:小林靖】
阪神・矢野燿大監督【写真:小林靖】

チーム防御率はリーグトップ、チーム打率と得点は低迷

 セ・リーグ3位の阪神は8日から、敵地・横浜スタジアムでDeNAを相手にCSファーストステージに臨む。現役時代に中日、巨人、西武で捕手として活躍し、阪神でも2軍コーチやスカウトを歴任した中尾孝義氏は「ロースコアの試合展開の方が、勝つ確率は高いと思います」と指摘した。

 阪神は今季、投手陣がリーグトップのチーム防御率2.67をマークする一方で、打線はいずれも同5位のチーム打率.243、489得点と低迷。それだけに「ファーストステージでは、強力なDeNA打線をどう抑えるかがポイント。仮にそこで勝てたとして、ファイナルステージでも課題は同じです。相手がヤクルトとなれば、村上(宗隆内野手)を抑えるのは非常に難しい。ストライクゾーンのほとんどが、芯に当たればホームランですから。何でストライクを取り、何で勝負するのか、対策をしっかり叩き込んでおかないと、痛い目を見ます」と、日本選手シーズン新記録の56本塁打を放った主砲へ最大限の警戒を求めた。

 先発投手陣は、最多勝、最優秀防御率、最高勝率の3冠に輝いた青柳晃洋投手、西勇輝投手、伊藤将司投手、西純矢投手らが安定。ただし、リリーフ陣には一抹の不安が残る。シーズンの大半でクローザーを務めた左腕・岩崎投手は、57試合で1勝6敗28セーブ、防御率1.96。トータルの防御率は優秀だが、9月20日のDeNA戦(甲子園)で2点リードの9回に登板し、3失点で逆転負けを喫するなど、手痛い敗戦もあった。

 中尾氏は「セットアッパーとして活躍した昨年に比べると、ボールに力がなかった。毎年これだけ投げているのだから(今季を含め6年連続40試合以上登板)、勤続疲労があったとしても無理はない」と指摘した上で、「レギュラーシーズン終了後、少し間隔が空いたので、力は戻っていると思います」と期待を寄せた。

 実は中尾氏は、国士舘大時代に東都大学リーグの2部で投げていた岩崎を見出し、2013年ドラフト6位で指名した担当スカウトだった。「CSはともかく、阪神は来季、本当の抑えを確立すべきです。岩崎は、その前の8回を担うセットアッパーが適任だと思います。8回と9回ではプレッシャーが違いますし、相手打者の集中力も違う。球種が少ない岩崎(ストレート、スライダー、チェンジアップのほぼ3種類)は、球威とコントロールがない時には打たれる。今年はコースも甘くなる試合が多かった」と見ている。来季は新監督の下、今季3セーブのカイル・ケラー投手、セットアッパーとして59試合2勝3敗、防御率1.09と進境著しい湯浅京己投手らが、守護神候補となるのだろうか。

「このCSでは、どれだけミスを少なくするかもポイントだと思います」と語った中尾氏。ミスにも走攻守でいろいろあるが、とりわけ今季リーグワーストの18失策を犯した中野拓夢内野手をはじめ、チーム全体でもリーグ最多の86失策を記録した阪神の守備陣が、汚名を返上する美技をCSの大舞台で披露することができるか。来季につながる試合を見せてほしいものだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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