オリと鷹、何が違った? パCSの分岐点は第2戦…元首位打者が見た“顕著な差”

オリと鷹「打撃では粘り強さの差が色濃く出た」

 第4戦は、この他にもシリーズ全体を凝縮するシーンがいくつもありました。両チームの中継ぎ陣は象徴的でした。オリックスは絶好調だった先発の山岡泰輔投手が左足に打球を受けた影響もあって、無失点ながら4回で降板しました。チームとして予期していない事態に陥りましたが、2番手の宇田川優希投手が2回無失点と好投。続く山崎颯一郎投手はソフトバンクのアルフレド・デスパイネ外野手に同点2ランを許したものの、勝ち越しは許さずに2回を投げ切りました。2人とも中1日でシリーズは2試合目の登板と、体力も気力も十分に残っていました。

 一方のソフトバンクは勝利しか許されないプレッシャーの中、大関友久投手がシリーズ3試合目の登板で、藤井皓哉投手が3連投。松本裕樹投手、モイネロ投手はともに連投とギリギリの状態で戦っている印象でした。9回に登板して敗戦投手となったリバン・モイネロ投手は変化球でストライクが取れず、本来の調子とは程遠いマウンドでした。

 打撃では粘り強さの差が色濃く出ました。特に、3回2死二塁でオリックスの福田周平外野手が11球粘って相手の失策で出塁したシーンは印象的でした。先ほどお話した杉本選手にも共通していますが、ボール球には手を出さない、簡単にはアウトにならない意識がチームで徹底していました。

 ソフトバンクは本来、相手バッテリーにプレッシャーやストレスをかけられる打線ですが、このシリーズでは全体的に力が入りすぎ、粘り強さを欠きました。レギュラーシーズンであれば見逃せるボールゾーンに落ちる球を繰り返し振ってしまったり、淡白な打撃になってしまったりする場面が目立ちました。力みや動きの硬さは守備にも出てしまい、失策だけではなく、併殺にできる打球でアウトを1つしか取れないなど、記録に残らないミスもありました。それでも、失点を防ぐのはソフトバンクのチーム力ですが、らしくないプレーで試合の流れを掴めませんでした。

 このシリーズの勝敗の分かれ目は第2戦だったと思います。リーグ優勝による1勝のアドバンテージがあることに加えて、山本由伸投手と宮城大弥投手という左右の好投手を揃えるオリックスは、ソフトバンクより短期決戦は優位だと感じていました。そして、ソフトバンクに日本シリーズ進出のチャンスがあるとすれば、宮城投手が先発した第2戦の勝利が絶対条件と見ていました。

 しかし、ソフトバンクは3-4で第2戦に敗れました。この試合に勝利して、ホークス首脳陣は2勝2敗で第4戦に臨むシナリオを描いていたはずです。しかし、結果的に1勝3敗と後がない状況で第4戦になってしまいました。裏を返すと、ソフトバンクの思い通りにさせなかったオリックスの強さが際立ったシリーズだったと思います。

(「パ・リーグ インサイト」土谷鉄平)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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