「お前は続けろ」元プロ兄が託した夢 何度も引退危機に…波乱万丈のドラフト隠し玉

一躍ドラフト隠し玉に急浮上した【写真:工藤慶大】
一躍ドラフト隠し玉に急浮上した【写真:工藤慶大】

志半ばで引退した兄「お前はまだ続けろ。どんなことになっても支援する」

 先が見えない状況の中、志半ばで引退した兄に夢を託される。「お前はまだ続けろ。どんなことになっても支援はするから」。NPB入りして、兄の果たせなかった1軍で出場することが明確な目標になった。「お兄ちゃんにはずっと敵わなかった。周りからも比べられたので、絶対に負けたくないという思いで頑張ってきた。それは今になっても変わらないです」と必死にチームを探した。

 すると、今年1月に徳島から声をかけられて契約。ドラフト会議では9年連続でNPBに選手を輩出している球団で、やっと野球に集中できる環境に辿り着いた。その一方で、ここでダメだったら諦めようという決心もついた。「世間からしたら若いですけど、ドラフトの平均年齢からしたら若くないので。これで最後かなと思って、今年をラスト一年にしました」と覚悟を決めた。

 並々ならぬ思いで臨んだシーズンも、序盤は結果が出なかった。しかし、7月に野手転向に踏み切ると、最初の12試合で10盗塁の大活躍。7月30、31日のソフトバンク3軍との2連戦では7打数3安打と、一躍ドラフト隠し玉に急浮上した。苦難の道のりだったが、底抜けの明るさが持ち味。「豪快な走りとハッスルプレーを見てほしいですね」。10日から始まったフェニックス・リーグでアピールを続けながら、運命の日を待つ。

(工藤慶大 / Keita Kudo)

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