野村克也を手玉に取ったV9戦士 「投げる球が全部わかる」猛打の裏にあった観察眼

南海の正捕手を務めた野村克也【写真:共同通信社】
南海の正捕手を務めた野村克也【写真:共同通信社】

柴田勲氏は南海との1966年日本シリーズでMVP…打率.565をマークした

 スイッチヒッターとして日本球界初の通算2000安打に到達した柴田勲氏。“赤い手袋”の異名でセ・リーグ最多の通算579盗塁をマークするなど、巨人の9連覇に大きく貢献した名外野手は、思い出に残る日本シリーズが「2つあります」と語る。まずは南海と覇権を争い、MVPを受賞した1966年の戦いを振り返ってもらった。

 半世紀以上が経った今でも鮮烈に記憶に残る。「両方の監督さんに褒められました。日本シリーズでの自分のプレーとしては一番良かったですね」。巨人は川上哲治、南海は鶴岡一人。球史に残る2人の名将が絶賛したプレーは、1勝1敗で迎えた第3戦(大阪球場)で飛び出した。

 両軍無得点の5回2死三塁。南海の先発はエース右腕・渡辺泰輔だった。俊足を生かすためスイッチヒッターに転向して4年目の柴田氏は左打席に入った。

 快足自慢の柴田氏とはいえ、2アウト。南海の内野陣の警戒は薄れていた。「ポンと転がしたんです」。ヒッティングの構えから切り替え、ドラッグバント。意表を突いた上に、ボールは渡辺、一塁のケント・ハドリ、二塁のジャック・ブルームの間を転がった。ブルームが捕球して一塁送球も柴田氏のスピードが勝った。三塁走者の柳田利夫が先制のホームを踏んだ。

 巨人は続く6回に王貞治が本塁打、7回には再び柴田氏が中前にタイムリーを放って3-2で競り勝った。シリーズの主導権を握った巨人は、4勝2敗で日本一に輝いた。

 このシリーズ、柴田氏は6試合23打数13安打で打率.565、2本塁打、7打点と打ちまくった。打率は2005年に4戦決着した際の今江敏晃(ロッテ)が.667(15打数10安打)で上回るまで日本シリーズ記録。ポイントは渡辺に対しての打撃だったという。なんと7打数7安打2四球と10割をマークした。

「自分の感覚ですけど、投げるボールが全部わかるわけです。フォームに変わったところがあった。他の人に言ってもそこまで余裕がないのでわからなかったみたいですが、僕にはわかった。癖です。ほんのちょっとなんですけどね」

相手の主戦投手から7打数7安打…見破った“癖”

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