神奈川の公立に進んだ遊撃手が「別人」の投手に 鷹育成12位から“大化け”する説得力

目標は160キロのストレート 憧れは育成から這い上がった千賀滉大投手

 今春の神奈川大会、桐光学園との4回戦で、飛田は公式戦初登板初先発を飾った。その1週間前、吉田監督から、「ピッチャーとして面白い子がいるので、ぜひ見てください」と教えてもらっていたこともあり、私の期待値も高まっていた。

 序盤、スピンの効いたストレートでグイグイと勝負を挑み、桐光学園打線を押し込んだ。ボールの回転が良く、ストレートを狙われていても、ファウルでカウントを稼いだ。細かいコントロールや変化球の精度に課題はあったが、期待以上のポテンシャルを見せた。

 結果は8回まで投げ切り、8安打9三振5失点で、チームは2-5で敗戦。このとき、最速141キロを記録していた。

 ただ、初回から力投を続けていたこともあり、大会後に肘に違和感を覚え、しばらくノースローに。投げる体力がまだ備わっていなかった。6月下旬から本格的に投げ始め、夏の大会では遊撃手兼リリーフで、ベスト16まで勝ち上がった。

「状態は、春のほうが良かったです。桐光学園戦は課題もたくさん出たんですけど、指にかかったストレートでバッターを押し込むことができて、自信になりました。試合を作る楽しさと同時に、難しさも感じて、ピッチャーに興味が湧くきっかけになった試合でした」

 今の時点では、まだ素材だけで投げている段階だ。本人も自覚をしている。

「上体の力だけで投げていて、足を使えていない感じがあります。ピッチャーの投げ方がわかっていなくて……。プロで本格的にトレーニングをして、専門的なことを教わることで、自分ではもっと伸びると思っています」

 憧れは、中学生の頃から好きで、よく見ていたという千賀滉大投手(ソフトバンク)。育成枠からエースにまで登り詰めたことも、大きな励みとなる。

「160キロのストレートを投げて、球界を代表するピッチャーになるのが目標です」

 吉田監督も、「体作りで+5、フォームを覚えることで+5、伸び代しかありません」と教え子のさらなる飛躍を楽しみにしている。

(大利実 / Minoru Ohtoshi)

○著者プロフィール
大利実(おおとし・みのる)1977年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、スポーツライターの事務所を経て、フリーライターに。中学・高校野球を中心にしたアマチュア野球の取材が主。著書に『高校野球継投論』(竹書房)、企画・構成に『コントロールの極意』(吉見一起著/竹書房)、『導く力-自走する集団作り-』(高松商・長尾健司著/竹書房)など。

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