気乗りしないトレード「断ったら引退やぞ」 温泉で告げられた移籍が“最高の転機”に

中日、巨人などで活躍した中尾孝義氏【写真:中戸川知世】
中日、巨人などで活躍した中尾孝義氏【写真:中戸川知世】

中尾孝義氏が明かす…34年前のトレード通告の瞬間

 巨人・西本聖投手、加茂川重治投手と中日・中尾孝義捕手の2対1のトレードは1988年オフにまとまった。巨人のエース格と中日がリーグ優勝した1982年のMVP捕手という大物同士の交換。同一リーグで親会社がライバル関係にある中、巨人・藤田元司監督と中日・星野仙一監督の超極秘交渉で決まったといわれる。そんな衝撃的な出来事の裏側。34年の時を経てトレード通告の瞬間を当事者の中尾氏が明かした。

「星野さんから電話がかかってきたんです。『おい、トレードが決まったぞって』」。その時のことを中尾氏ははっきりと覚えている。「『そうですか、どこですか』って聞いたら、星野さんは『巨人や、西本とトレードや』って」。オフのオーバーホールで訪れていた長野・昼神温泉のホテルで通告された。「『行かなきゃダメですか』って聞いたんですが、『あったりまえだろ! 断ったらお前、クビだぞ、引退やぞ』って言われました」

 中尾氏は「電話の前でも直立不動で返事していました」と振り返ったが、実はその時、ホテルの自室にいたわけではない。「(ホテル1階の)フロントで電話を受けて言われました」。一般客も普通に行き来する公の場所。超極秘事項だった巨人、中日間のトレードだが、その最終段階の通告は、何と他の人の目にも簡単に触れられるところで行われていた。こっそりと伝えるために電話をかけた星野監督もその点だけは計算外だったに違いない。

ホテルの1階で夜食中「星野監督からお電話です!」

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