グラウンドで敵監督にトレード直訴「獲ってください」 オリで干され…念願だった“放出”

声を荒らげる星野氏の顔を見たところ…「お前でええから行け」

「すみません、監督。南牟礼と申します。トレードで獲っていただけませんか」。はっきりそう伝えると闘将はこう答えた。「お前のことは聞いとるわ。でもな、オリックスがローテーションのピッチャーをよこせっていうから、まとまる話もまとまらんのや」。なおも食い下がって「まだトレードの期間もあるのでよろしくお願いします」というと「おう」。それで終わったという。星野監督はその後もちゃんと調査していた。そして、ついに中日入りが現実になったわけだ。

 燃えた。中日では2軍スタートだったが、必ず呼ばれると信じて練習に明け暮れた。その通り、チャンスは来た。1軍昇格だ。直後のヤクルト戦。レフトの大豊泰昭がポロリとやってしまった。「誰じゃあ! 下手くそを出しやがったのは!」と星野監督が声を荒げた。ベンチではみんな下を向いていた。「でも何も知らないから、僕だけ、その瞬間パッと監督の顔を見てしまったんです。そしたら『お前でええから行け』って」。そのままレフトに入った。

 無死一、二塁で回ってきた打席では左中間にホームラン。「当たったと思った」。試合にも勝った。その後も活躍できた。スタンドからは大音響の「トヨゾー」コール。オリックス時代にはなかった快感だ。まさに充実の日々だった。だが、それも……。またまたまさかの展開が待っていた。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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