阪神の“弱点”埋める存在も…なぜ放出? 未完の大砲が見出せなかった居場所

現役ドラフトで西武に移籍した陽川尚将【写真:小林靖】
現役ドラフトで西武に移籍した陽川尚将【写真:小林靖】

左キラーとして存在感も、ポジションを奪えず

 NPB初の試みとなった9日の「現役ドラフト」で、阪神の陽川尚将内野手は、西武への入団が決まった。2013年のドラフト3位で入団し、右の大砲として期待され続けながらもレギュラーに定着できず。“放出”された形となり、プロ10年目は新天地で迎えることになった。

 東農大から入団し、2016年に1軍初出場を果たして2本塁打を放った。甲子園の右中間にも放り込めるパワーが魅力で、5年目の2018年には不振のウィリン・ロサリオ内野手に代わって4番を務めるなど、自己最多の75試合に出場し、6本塁打48打点の成績を残した。本塁打後にベンチで胸を叩く“ゴリラポーズ”も恒例となっていた。コロナ禍で短縮シーズンとなった2020年は71試合でキャリア最多の8本塁打を放った。

 今季は開幕1軍とはいかなかったが、7月以降は主に代打で出場し、打率.294をマーク。特に左投手を得意とした。セイバーメトリクスを用いてデータ分析を行う株式会社DELTA(https://1point02.jp/)によると、今季に40打席以上立った打者の中ではチームトップの対左打率.357を記録。チーム全体の対左打率.228は12球団ワーストだったが、阪神は貴重な“左キラー”を手放すことを決めた。

 守備に目を向けると、三塁には大山悠輔、佐藤輝明がおり、一塁と外野も毎年助っ人とポジションを争う状況だった。パンチ力はあるものの、その選手たちを上回る成績を残すことができず、存在感は薄くなっていった状況がうかがえる。

 西武はパ・リーグで指名打者制もあるため、出場機会が増える期待もある。三塁のポジションは中村剛也内野手が来年40歳を迎え、今季のレギュラーも流動的だった。外野陣は攻撃力に欠けているため、長打力のある陽川は貴重な存在となる。虎ファンから期待され続けた“未完の大砲”は、新天地で居場所を確立できるだろうか。

(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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