伝説の投手が今も悔しがる“1球” 想定外の事態に「うわーっ」…史上初のお披露目は幻|球界群像 近田豊年#4
ダイエー時代の近田豊年氏【写真:本人提供】近田豊年氏は「ジュニア球宴」で両投げを予定も見せられなかった
左右両方で投げる“スイッチピッチャー”として南海に入団した近田豊年氏だが、NPBの公式戦では両投げを披露できなかった。左投げの鍛錬に手一杯で、右で投げる余裕もなかった。プロ1年目の1988年シーズン当初は注目を一身に集めていたが、キャンプ、オープン戦、ペナントレース開幕と日を追うごとにブームも下火となっていった。そんな中、7月の「ジュニアオールスター」ではその“技”を見せるつもりでマウンドに上がったという。ところが……。
0-0の4回裏、リリーフ登板の近田氏はマウンドでの投球練習で、まず左で投げ、それから6本指のグラブを持ち替え、右で投げた。しかもこれまでのアンダースローではなく、オーバースローで。「(上手でも下手でも)どっちでもいけたんでね」と振り返るが、投球練習通りに実戦でもそうするつもりだったという。2死一、二塁で打者はヤクルトの橋上秀樹外野手。1球目は左からカーブを投じて見逃しのストライク。2球目も左から同じくカーブを投げた。
「2球目もストライクだったら、次は右で投げようって思っていたんです」と近田氏はその時の考えを明かす。だが、2球目を打たれて、“計算外”のショートゴロでチェンジ。「うわーっ、投げられんかったって思いました」。苦笑いを浮かべながらマウンドを降りるしかなかった。結局、ここでもまた両投げを見せられなかった。抑えたけど悔しかった。それでも、まだ1年目のシーズン。公式戦で、いつかチャンスはあるはずと信じていた。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)
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