帰国して周囲から「丸くなった」 “一匹狼”福留孝介氏を変えた米国での5年間
日本球界復帰後に言われる「丸くなった」、その理由とは…
4年総額4800万ドル(当時のレートで約53億円)の大型契約を結び、伝統あるシカゴ・カブスへ移籍したのが2008年。好守好打の外野手として期待され、開幕戦では9回裏に同点3ランを放つ鮮烈なデビューを飾って、その年の球宴に出場。一方で、4年目の2011年にはシーズン途中でインディアンスへトレード移籍し、ホワイトソックスとヤンキースに所属した2012年はマイナー生活や戦力外通告も経験。酸いも甘いも凝縮された5年のうち、“丸くなった”理由はどこにあったのか。
「日本にいる時って自分で何でもできるじゃないですか。言葉も通じるし、何でもできる。でも、アメリカでは自分でしたいと思うことがあっても、誰かの手助けがないとできないことの方が多い。例えば、遠征中はシカゴに残る家族をサポートしてくれる人がいたり、遠征地で食事に行く時は現地に長く住む記者がオススメを教えてくれたり。周りの人たちと助け合わないと何もできない経験をしたからこそ、自然と『自分だけ』ではなくなったんだと思う。人との付き合い方という部分では本当に、少し丸くなったというか、いい勉強をさせてもらったよね」
日本球界に復帰したのは2013年のこと。阪神、そして中日で過ごした10年では、若手選手との会話から新たな気付きや刺激を受けたとも話す。
「日本に帰ってきたら、周りはほぼ年下の選手。彼らと話をすることで、今の日本の野球が見えてくるというか。以前は悩んでいる若手を見ても『は? まだ悩む段階にないやろ』くらいに突っぱねるところがあったけど、日本に戻ってきてからは『そうか、そういう風に悩むんだ。ちょっとその悩み、俺も一緒に考えてみたいな』って思うことが増えたよね。興味を持てるようになった」
後輩とのスタンスの変化は、自身の野球との向き合い方が変化した影響もあるようだ。阪神加入後は「個人的なことを追うことはほとんどなくなった」と言い、チームのため、次世代のため、を強く意識するようになった。
「見られているし、見せなきゃいけないという思いがあるから、『お前ら、ちゃんと見ろよ』と意識しながらやっていたのはあるかもしれない」