TBS系の人気番組「プロ野球戦力外通告」に出演、元オリックスの海田智行投手
昨年12月28日に放送されたTBS系の人気番組「プロ野球戦力外通告」に出演した、元オリックスの海田智行投手がSNSで炎上した。同行した番組ディレクターに対する言動に賛否が巻き起こったが、ここでは実際に取材した立場として“舞台裏”を届けたい。
筆者は昨年末に戦力外通告を受けた海田氏の“第2の人生”について取材を行った。現役続行に未練はなく、今後はアマチュア野球の指導と共に、キャンプ歴31年間の知識を生かした「ギアショップ」の開業を目指していく内容だった。
その中で、本人から同番組に密着取材を受けていることを聞かされた。オファーを受けた際は「番組に対しては正直、嫌なイメージを持っていた。選手からすれば悲劇的な感じで捉えられ、ネガティブなことを放送するので……」と、乗り気ではなかったという。
戦力外後にトライアウトを受け、他球団からの連絡を待つ1週間。ストレスを感じる中、妻や子ども、自宅周辺のプライベートをさらけ出すことになる。番組側は決して“不幸”と切り取る意図はないというが、当事者の海田氏は前向きに捉えられずにいた。
では、なぜオファーを受けたのか。35歳の左腕は年齢的にもNPB復帰が容易でないことは理解していた。第2の人生を考えた際に「もしかしたら名前を売る仕事になるかもしれない。お互いがWin-Winになればいい。家族とも相談してOKという返事だった」と、出演を決めた。
番組ディレクターとの信頼関係が生んだタメ口「素の自分を出せたと思っています」
約1か月の取材に同行する“パートナー”にも恵まれたという。カメラを回すディレクターが同年代で取材中は何度も食事を共にした。海田氏がキャンプ好きということを知ると「山に一緒に行きましょう。焚火をしながらの絵は絶対に映えますよ」と、取材場所を手配し2人でテントに泊まるほどだった。
「多少のストレスを感じるかな? と思っていたのですがディレクターがめちゃくちゃ良い人で。本当に僕自身もやりやすくて人に恵まれました。素の自分を出せたと思っています」
番組内ではディレクターにタメ口で話す姿、自宅のソファでくつろぐ様子が放送され、SNS上では「態度が悪い」「なんでタメ口なんだよ」とコメントが殺到した。だが、ドキュメンタリーを撮りたい番組側と海田氏の信頼関係があったからこそ生まれた作品。そこを批判するのは、違っているようにも思えた。
また、阪神から年俸700万円で打撃投手のオファーを断ったことにも「バッピを軽視している」と多くの批判が寄せられていたが、これは完全にお門違い。
当時の海田氏はトライアウトを受け、現役続行を目指してたから断るのは当たりの話だ。金額ではなく“現役”が最優先。たとえ700万円以下でも他球団からオファーがあれば喜んで入団していたと、本人も語っていた。
「同じ経験をしてきていない他人に何を言われても心に響くことはない」
年末に起きた“まさか”の炎上騒動。海田ファンの方々は心配したかもしれないが、安心してもらいたい。
プロの世界で11年間、生きるか死ぬかのマウンドを経験してきた左腕は「僕は全くSNSとか記事へのコメントを気にしたことがないんですよね。だって自分のことは一番、自分が分かっているじゃないですか。同じ経験をしてきていない他人に何を言われても心に響くことはない。そんなことで悩んでいる暇もないですから」と、笑いを交え語っていた。
本人はインスタグラムなどで自身の情報を発進しているが、今回の炎上についての反論はしていない。お節介になるかもしれないが、番組後に植え付けられた“イメージ”とは違う男ということだけは読者の方々に伝えておきたい。
○著者プロフィール
橋本健吾(はしもと・けんご)
1984年6月、兵庫県生まれ。報徳学園時代は「2番・左翼」として2002年は選抜優勝を経験。立命大では準硬式野球部に入り主将、4年時には日本代表に選出される。製薬会社を経て報知新聞社に入社しアマ野球、オリックス、阪神を担当。2018年からFull-Countに所属。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)