悔しがる王貞治が「酒で荒れたらしい」 世界のHR王が流し打ちに屈した“剛速球”

中日で活躍した小松辰雄氏【写真:共同通信社】
中日で活躍した小松辰雄氏【写真:共同通信社】

元中日・小松辰雄氏、王貞治との初対戦は「忘れられないよ」

 元中日エースで野球評論家の小松辰雄氏は子どもの頃、大の巨人ファンだった。王貞治氏と長嶋茂雄氏のONに憧れて野球を始めた。プロ入りした時、長嶋氏は巨人監督だったが、王氏は現役。1979年、プロ2年目の4月に対決が実現した時は大感激だった。「だって、目の前に1本足で立っているんだからね。もう、うれしくてたまらなかったし、忘れられないよ」。最大武器のスピードボールで世界のホームラン王に真っ向勝負を挑んだという。

 当時、王氏が打席に入ると、一塁手は一塁線へ、二塁手は一塁寄りへ、遊撃手は二遊間へ、三塁手は本来の遊撃手の位置へ、外野手も右側へ移動した。有名な王シフトだ。右方向への打球が多いことを計算してのものだ。小松氏も、そのシフトを背に投げた。「何球投げたかは、覚えてないけど、全部、真っ直ぐで行った」。結果はショートの位置に守っていたサード・ギャレットの正面へのゴロ。ところがこれをまさかのトンネルだ。

 記念すべき王氏との初対決はサードゴロエラーと記録されたが、あの“アーチスト”が振り遅れていたのは事実であり、自分のストレートに自信を深めたシーンでもあった。その後も「王さんには公式戦でホームランは打たれなかった」が、そんな中、もうひとつ印象に残っているのが初対決と同じ年の5月31日の巨人戦(後楽園)という。小松氏は1-1の同点で迎えた8回裏に登板。「2死二塁で王さんと対戦した」時のことだ。

 いつもの王シフトの中、王氏はレフトへちょこん。これが決勝打となり、小松氏は敗戦投手になった。「あの時、俺は30イニングくらい連続無失点をやっていて、王さんは30打席ノーヒットだったんだけど、長嶋監督が王さんに流せってサインを出したらしい。これも後から聞いた話だけど、その晩、王さんは『小松の球を引っ張ってやれんかった』と無茶苦茶、酒で荒れていたらしいんだよね」。

スピードガン導入につながった剛速球…世界の王に流し打ちさせた

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