全力投球に屈辱のひと言「いつ本気で投げる?」 くすぶる若き日…219勝左腕の”転機”

星野中日1年目の1987年…キャンプでアピールし、開幕1軍を掴んだ

 知らないことも多かった。「牛島(和彦)さんにもかわいがってもらって、いろんなことを教えてもらったんですけど、その頃は『はい』って返事しながら、何を言われているのか、よくわからなかった。自分が勝ち始めた頃になって、牛島さんはあの時、こういうことを言っていたんだってわかるようになったんですけどね」。まさに下積み時代。真面目さも含めて、すべてが役に立ったのは間違いない。勉強になり、経験になり、成長につながった。

 そんな中で星野監督に出会った。1986年の浜松秋季キャンプ。ブルペンで投げていたら、就任したばかりの若き指揮官が近づいてきた。アピールしなければと力が入った。すると「おい34番! いつになったら本気で投げるんだ」と声を掛けられた。「『あのぉ、全力です』と答えたら『そうか』って。たぶん、ガクッと来たんでしょうね」と山本氏は苦笑する。

 それでもくじけなかった。プロ4年目の1987年の春のキャンプでは毎日、ブルペンで投げ込んだ。「ブルペンに入らなかった日はなかった。(トータルで)3000球は放ったんじゃないかな。今では考えられないけどね」。星野監督はそんな姿をちゃんと見ていた。開幕1軍切符をつかみ、4月10日、開幕カードの巨人戦(後楽園)では2番手で登板。翌4月11日の2戦目も2番手で登板した。だが、その年、3試合目の登板となる4月14日の広島戦(ナゴヤ球場)でアクシデントに見舞われた。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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