負けたら米国へ“強制送還” 「確信に変わった」はずが…極限状況で大珍事「嘘だろ」

9勝目から見放された“勝ち運”…2桁ならず2年連続で米国へ

 そこから山本氏は巻き返して、球宴前まで7勝5敗1セーブ。白星を先行させるまでになった。その年の球宴でセ・リーグを率いたのは前年優勝の中日・星野仙一監督。「『マサ、お前、オールスター、行きたいか』と言われて『当然、行きたいです』って答えていたんですが、発表されたメンバーに名前がなかった。何だよって思っていたら、ヤクルトの尾花さんが投げられなくて辞退して、僕が代わりに出場することになったんです。おそらく星野さんはそういうことも知っていたんでしょうね」

 星野監督にうまく“操縦”された感じだが、その年はさらに、もうひとつ、試練を与えられた。8月26日の巨人戦(東京ドーム)で9勝目をマークしてから、勝ち運に見放された。2桁勝利目前で足踏みが続いた。「足踏みといっても、0-1の試合とかもあったんですよ。それが“10勝の壁”とか書かれ始めて……」。

 4度目の挑戦となった9月23日の阪神戦(甲子園)。「これで負けたらアメリカに行けって話になった。投手コーチもバッテリーコーチもそれを知っているので『マサ、今日は飛ばしていけよ、頑張れ。(リリーフの)鹿島も(郭)源治も(中5日と)登板間隔が空いているから』と言われて。5回までに10三振を取ったんですよ。でも……」。5-2で8回もマウンドに上がったが「外野の落球もあってピンチを作ったんです」。ここで投手コーチがマウンドに来た。

 交代と思ったら「『マサ、お前、監督が代えんって言っているぞ』と言われたんで、ええーって思いましたよ」。それでも気持ちを切り替えて投げたが「外野がまた落球して……嘘だろと思った」。その回、4点を失って逆転されて敗戦投手となり、アメリカ行きが決まった。しかも往復のチケット代は自腹だった……。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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