イチローはベンチを「1回も見なかった」 歓喜の中心にいるべき“日本の象徴”の苦悩

イチロー氏は日本代表を「まとめるというよりも象徴だった」

「相手の送球を見て、イチローはセカンドに行っていた。あの局面でも普通にプレーできるのもすごいと思いますよ。ただ、みんなが手を突き上げて、イチローの方を向いているんだけど、イチローは1回も(ベンチの方を)見なかったんですよね。聞いた話だけど、涙が出そうだったみたいですよ。みんなの姿を見たら涙が出る、そういうことを言ったみたいです」。それほどまでにイチローにとっては苦しい戦いだったのだろう。仲間たちに支えられた思いも強かったはずだ。

 高代氏は「リーダーシップを取っていたのはイチローという存在だと思う」と言う。その言葉だけでなく、行動も含めてすべての面で。「まとめるというよりも象徴ですね。オーラがありました。向こうで記録もいっぱい出して、やっぱりプロ野球選手といえども、イチローと一緒になればワクワクする。メンタル面でもイチローがいるだけで、モチベーションが上がったと思う」。

 そんな2009年大会だったが、歓喜の優勝にたどり着くまでにはいろんな出来事もあった。宮崎合宿から始まり、東京ラウンド、米国ラウンド。韓国とは5試合も戦うことにもなったが、ある食事会での松坂大輔の発言も印象に残っているという。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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