高橋宏斗の“新フォーム”は「お互い相当な覚悟」 情報量の多さが呼んだ決断の難しさ

覚悟と覚悟のせめぎ合い、前進のカギは互いが築く信頼関係

 かつて、教えを請うのは同じチームの先輩やコーチが主流だったが、今では他球団の選手と一緒に練習したり、(米国の)ドライブラインのような外部施設を利用したり、選手が成長を求めて利用できるリソースの選択肢は幅広い。五十嵐氏は「球界一の呼び声高い山本投手からアドバイスを受けたくなるのは当然のこと」と高橋宏に理解を示すと同時に、こう続ける。

「情報量の多さから生まれた現代ならではの出来事。情報量が多いのはいいことだけど、何が必要で何を捨てるのか、そのバランスを客観的に見る目と判断力が必要です。これは選手だけではなく、監督・コーチも同じ。新しいことを試すのであれば、どこまでとり入れるのか。その範囲の判断は大切です」

 五十嵐氏は自身の経験も踏まえながら、選手と首脳陣の間に築かれる信頼関係の重要性について触れる。

「覚悟を決めた選手に意見するのは、また覚悟がいること。指導者はデータや情報などを理解した上でていねいに説明し、選手のモチベーションを下げることなく、同じ方向に進んでいくことが大事になります。成長の過程では技術的にも精神的にも伸び悩み、試合で十分なパフォーマンスを発揮できないこともある。自分の選択が正しかったのか、選手の心が揺れ動くこともある。そんな時こそカギとなるのは選手と監督・コーチの信頼関係であり、ていねいに時間を掛けて取り組むことが絆を深めるのだと思います」

 覚悟を持ってフォームを変えた高橋宏と、覚悟を持ってその決断に意見した首脳陣。2つの覚悟のせめぎ合いは、最終的に同じ方向へ一歩を踏み出す信頼関係につながったのか。ここから先、高橋宏がどんな投手に成長していくのか、注目が集まる。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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