糸井の言葉に絶句「何してるんですか?」 這いつくばって進塁阻止…WBC名場面の舞台裏

普通の体勢なら…糸井は「たぶん通り過ぎていた」

 もしも、あの時、普通の体勢でストップを指示していたらどうなっていただろうか。「たぶん(糸井は)通り過ぎていたと思います。見えてないから。まぁ、ピッチャーが(打球に)触っていたんだから、糸井も“どうなってるの”って俺をうかがえば良かったんだけどね」と高代氏は話す。

 続けて「(セーフになった後)糸井が『何しているんですか』って言いやがってね。『何しているんですかじゃないよ、お前』ってね。糸井らしいといえば糸井らしいけど、まぁ糸井ですわ、ホンマに」と当時を思い出しながら、笑みをこぼした。

 しかしながら、こうも付け加えた。「結局、向こうのセカンドにミスが生まれているんですよ。ピッチャーが触って打球が緩くなって、ショートがダイビングして、セカンドが捕ったけど、まだファーストに投げようとしましたからね。捕ってすぐオーバーランを狙ったら、おそらくアウトだったと思う。俺が相手の守備コーチだったら、あれだけ時間がかかって、打者走者をアウトにできるか、なんですぐにオーバーランを狙わなかったのかって言いますよ」。

 このシーンが語り継がれていることに高代氏は「継がれたくないけど……」と微笑む。「あれは俺のファインプレーでも何でもなくて、解説すれば相手のセカンドに助けられたんです。でも結果、止まってセーフになったからすべて良し。方法とかわからないから、ああなっただけで、あんなの自分の技と言われたら、とんでもないですよ」とも話したが、瞬時に誰でもできることではないだろう。やはり侍ジャパンの歴史に残る名シーンのひとつと言っていいはずだ。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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