「緊張はとことん、するもの」 五輪MVP山田哲人が明かす大舞台での心持ち
襲い掛かる重圧「正直逃げたくなる」も「緊張した中でいいプレーを」
高め合う最高の仲間とともに目指す、頂点。いよいよ大会も迫り「楽しみもあり、不安もあり……。色々な思いがあります」と山田の心を、様々な感情が襲う。
2017年のWBC前回大会や2019年のプレミア12でも重要な場面で一発を放ち、2021年の五輪ではMVPに輝くなど“国際大会に強い”と言われるが、元々緊張しやすいタイプ。「正直逃げたくなるくらい」の重圧の中で「緊張はとことん、するものだと思っています。無理に緊張しないようにやるのではなく、緊張した中でいいプレーをするぞという気持ちでやっています」とうまく付き合うことでパフォーマンスを発揮している。
さらに「決めつけはしないようにしています」というのも山田の強み。一般的に、国際大会で初対戦の投手相手には積極的にいくべきと言われることが多いが「それで結果が出る時もあれば、じっくり相手の球の軌道を見ながらいった方が結果が出ることもある。消極的になれば受け身になってやられてしまうというのは正解ではあるんですけど、それが全てではないと思っています」。臨機応変の対応力が、ここぞの一打を生む。
昨季の不甲斐なさ、悔しさに自問自答したが、栗山英樹監督から「どうしても必要だ」と声を掛けられ「期待に応えたい、貢献したい」と奮い立った。大舞台を前にしながら打撃改造にも着手。キャンプ序盤には、オフから取り組んできた新フォームをやめ、さらなる進化にも挑んだ。「変えるのも勇気ですし、変えないのも勇気ですから」と高みを目指し続け、「調整しなければいけないですけど、昨年の成績があるのでレベルアップしないといけない」と、とにかくバット振り込む姿があった。
今大会は、他国にも現役メジャーリーガーが多く名を連ねる。しかし「(MLBは)あまり見ないですし、トラウトとかは分かりますけど全員が全員知っているわけではない。だから相手はあまり気にしていないですかね。強敵でもそうでなくても、一生懸命やるというプレースタイルは変わらないので」と冷静に足元を見つめた。
「目指すのは世界一、それだけです」と表情を引き締めた山田。期待を一身に背負い、とてつもない重圧と戦いながら、世界一の景色を見に行く。
(町田利衣 / Rie Machida)